下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和3年 問7

【動画解説】法律 辻説法

【問 7】 Aを売主、Bを買主として、A所有の甲自動車を50万円で売却する契約(以下この問において「本件契約」という。)が令和3年7月1日に締結された場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 Bが甲自動車の引渡しを受けたが、甲自動車のエンジンに契約の内容に適合しない欠陥があることが判明した場合、BはAに対して、甲自動車の修理を請求することができる。

2 Bが甲自動車の引渡しを受けたが、甲自動車に契約の内容に適合しない修理不能な損傷があることが判明した場合、BはAに対して、売買代金の減額を請求することができる。

3 Bが引渡しを受けた甲自動車が故障を起こしたときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。

4 甲自動車について、第三者CがA所有ではなくC所有の自動車であると主張しており、Bが所有権を取得できないおそれがある場合、Aが相当の担保を供したときを除き、BはAに対して、売買代金の支払を拒絶することができる。

【解答及び解説】

【問 7】 正解 3

1 正しい。引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
*民法562条1項

2 正しい。引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものである場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。そして、履行の追完が不能であるときは、買主は、追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。本肢では、修理不能な損傷があるので、直ちに代金の減額を請求することができる。
*民法563条2項1号

3 誤り。甲自動車の故障が、修理が不能であり、履行が不能であるといえる場合には、修理を請求することなく本件契約を解除することができるが、修理が可能で、履行が可能である場合には、履行の催告が必要であるから、解除をするには修理の請求が必要な場合もあり得る。
*民法541条、542条

4 正しい。売買の目的について権利を主張する者があり、買主がその買い受けた権利の全部若しくは一部を取得することができず、又は失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。
*民法576条


【解法のポイント】本問は、どれか一つを正解とせよ、ということであれば肢3が正解ということになると思います。しかし、契約の解除をするには、一定の場合を除き、「履行」の催告が必要となりますが、この「履行」というのは「修理」だけに限定されるものでしょうか。履行の催告=修理の請求となるのかどうかということです。代替物の引渡し請求でもいいような気がします。そうであれば、修理の請求をすることなく、代替物の引渡しの請求をした上で解除するということも認められそうな気がします。ただ、特定物の場合は(本問の自動車がそれに該当するかどうか問題文だけでは不明ですが)、「その物」で履行しなければならないわけですから、履行の請求=修理の請求ということになります。したがって、修理の請求をすることなく解除できないという場合もあり得るので、「誤り」ということになるのでしょうか。それとも、私が色々考えすぎているのでしょうか?いずれにしても肢3は「正しい」とはいえない場合もあるので、「誤り」ということになるのだと思います。「修理」という言葉は、肢1と肢2との異同を問うていくという意味で使われたのでしょうが、普通に「履行」と言ってくれれば迷わずに済んだんですが…