下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 令和2年(12月試験) 問11
1 借地権者が借地権の登記をしておらず、当該土地上に所有権の登記がされている建物を所有しているときは、これをもって借地権を第三者に対抗することができるが、建物の表示の登記によっては対抗することができない。
2 借地権者が登記ある建物を火災で滅失したとしても、建物が滅失した日から2年以内に新たな建物を築造すれば、2年を経過した後においても、これをもって借地権を第三者に対抗することができる。
3 土地の賃借人が登記ある建物を所有している場合であっても、その賃借人から当該土地建物を賃借した転借人が対抗力を備えていなければ、当該転借人は転借権を第三者に対抗することができない。
4 借地権者が所有する数棟の建物が一筆の土地上にある場合は、そのうちの一棟について登記があれば、借地権の対抗力が当該土地全部に及ぶ。
【解答及び解説】
しかし、この対抗力を得るには、建物を築造しただけでは足りなくて、建物の「登記」までしている必要があるので、その意味では「誤り」といえると思います。
問題文は、借地借家法10条2項の「掲示」で対抗力が生じる旨の条文を元にした文章ではありますが、「2年を経過した後」の対抗力を問題にしていることから、おそらく「掲示」の部分を問うているのではないと思います。ということは、建物の築造だけでは足りなくて、登記まで必要なんだということが言いたいのでしょう。
ただ、建物登記がなければ、借地権に対抗力がないのは、当たり前すぎるくらい当たり前なので、何となく出題意図がスッキリしません。
要するに、建物が滅失しても、「掲示」をすれば、2年間は対抗力があるが、2年以内に建物を築造したとしても、建物登記をしないと2年の経過以降は借地権に対抗力はありませんよ、ということが言いたいのだと思います。
ただ、これは借地上に「掲示」をしたことが前提の規定なので、そもそも問題文には「掲示」がなされたかどうかが不明で、「掲示」がないのであれば、2年経過以前から対抗力がありません。「掲示」がなければ、建物滅失時点から通常の借地権の対抗力の問題となり、単純に借地上の登記ある建物があるかどうかで対抗力の有無が決まります。
以上のように考えるのであれば、問題文の「2年を経過した後において『も』、これをもって借地権を第三者に対抗することができる。」という文章が不自然になります。『も』という言葉を使うのであれば、2年経過以前から対抗力があるかのように読めます。その意味でも「誤り」と言いたいのでしょうか?
本問は、「掲示」の有無、再築した建物の「登記」の有無が問題文からはっきりしないので、分かりにくい肢になっています。
いずれにせよ、肢4が確実に「正しい」ので、肢4が正解で問題はないとは思います。
【問 11】 正解 4
1 誤り。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。そして、この建物登記は、建物の表示の登記でもよい。
*借地借家法10条1項
2 誤り。借地権者が、土地の上に登記されている建物を所有する場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、一定の事項を土地の上の見やすい場所に「掲示」するときは、借地権は、なお対抗力を有する。ただし、建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき「登記」した場合に限る。
*借地借家法10条2項
3 誤り。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。そして、当該土地建物の転借人は、「借地人」が対抗要件を備えていれば、転借人は転借権を第三者に対抗することができる。
*借地借家法10条1項
4 正しい。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。そして、借地権者が所有する数棟の建物が一筆の土地上にある場合は、そのうちの一棟について登記があれば、借地権の公示になるので、借地権の対抗力は当該土地全部に及ぶ。
*借地借家法10条1項
【解法のポイント】肢2については、問題文が何を意味しているのか、私にはちょっと分かりにくい感じがします。建物が滅失した場合であっても、新たに建物を築造して建物登記をすれば、それ以降は借地権を対抗することができます。これは普通の借地権の対抗力の話です。したがって、建物が滅失した日から2年以内に新たな建物を築造すれば(2年以内でなくても建物を築造すれば)、2年を経過した後においても借地権を第三者に対抗することができます。その意味では、本肢は「正しい」となると思います。しかし、この対抗力を得るには、建物を築造しただけでは足りなくて、建物の「登記」までしている必要があるので、その意味では「誤り」といえると思います。
問題文は、借地借家法10条2項の「掲示」で対抗力が生じる旨の条文を元にした文章ではありますが、「2年を経過した後」の対抗力を問題にしていることから、おそらく「掲示」の部分を問うているのではないと思います。ということは、建物の築造だけでは足りなくて、登記まで必要なんだということが言いたいのでしょう。
ただ、建物登記がなければ、借地権に対抗力がないのは、当たり前すぎるくらい当たり前なので、何となく出題意図がスッキリしません。
要するに、建物が滅失しても、「掲示」をすれば、2年間は対抗力があるが、2年以内に建物を築造したとしても、建物登記をしないと2年の経過以降は借地権に対抗力はありませんよ、ということが言いたいのだと思います。
ただ、これは借地上に「掲示」をしたことが前提の規定なので、そもそも問題文には「掲示」がなされたかどうかが不明で、「掲示」がないのであれば、2年経過以前から対抗力がありません。「掲示」がなければ、建物滅失時点から通常の借地権の対抗力の問題となり、単純に借地上の登記ある建物があるかどうかで対抗力の有無が決まります。
以上のように考えるのであれば、問題文の「2年を経過した後において『も』、これをもって借地権を第三者に対抗することができる。」という文章が不自然になります。『も』という言葉を使うのであれば、2年経過以前から対抗力があるかのように読めます。その意味でも「誤り」と言いたいのでしょうか?
本問は、「掲示」の有無、再築した建物の「登記」の有無が問題文からはっきりしないので、分かりにくい肢になっています。
いずれにせよ、肢4が確実に「正しい」ので、肢4が正解で問題はないとは思います。