下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 令和2年(12月試験) 問1
1 建物の建築に携わる設計者や施工者は、建物としての基本的な安全性が欠ける建物を設計し又は建築した場合、設計契約や建築請負契約の当事者に対しても、また、契約関係にない当該建物の居住者に対しても損害賠償責任を負うことがある。
2 被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を与え、第三者に対してその損害を賠償した場合には、被用者は、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができる。
3 責任能力がない認知症患者が線路内に立ち入り、列車に衝突して旅客鉄道事業者に損害を与えた場合、当該責任無能力者と同居する配偶者は、法定の監督義務者として損害賠償責任を負う。
4 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する。
【解答及び解説】
【問 1】 正解 3
1 正しい。設計者や施工者が、建物としての基本的な安全性が欠ける建物を設計し又は建築した場合、設計契約や建築請負契約の当事者に対しては、契約上の債務不履行責任を負う。また、契約関係にない建物の居住者に対しては、不法行為に基づく損害賠償責任を負うこともある。
*民法415条、709条
2 正しい。ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。この場合、使用者から被用者に対して、信義則上相当な範囲で、求償権の行使を妨げない。これとは逆に、被用者が損害を賠償した場合に、使用者に対して相当と認められる額について、使用者に対して求償することもできる(逆求償、最判令2.2.28)。
*民法715条3項
3 誤り。責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。しかし、当該責任無能力者と同居する配偶者は、法定の監督義務者にあたらない(最判平28年3月1日)。
*民法714条
4 正しい。人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
*民法724条の2
【解法のポイント】本問の肢3は、大変難しい判例です。しかし、他の肢は比較的簡単だったと思うので、消去法で解答を導くしかないと思います。なお、肢1は、最高裁の判例(最判平19年7月6日)からの出題ですが、不思議なことに、今年の管理業務主任者(問39)でも、この判例が出題されていました。