下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和2年 問10

【動画解説】 宅建 辻説法

【問 10】 Aが甲土地を所有している場合の時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Bが甲土地を所有の意思をもって平穏かつ公然に17年間占有した後、CがBを相続し甲土地を所有の意思をもって平穏かつ公然に3年間占有した場合、Cは甲土地の所有権を時効取得することができる。

2 Dが、所有者と称するEから、Eが無権利者であることについて善意無過失で甲土地を買い受け、所有の意思をもって平穏かつ公然に3年間占有した後、甲土地がAの所有であることに気付いた場合、そのままさらに7年間甲土地の占有を継続したとしても、Dは、甲土地の所有権を時効取得することはできない。

3 Dが、所有者と称するEから、Eが無権利者であることについて善意無過失で甲土地を買い受け、所有の意思をもって平穏かつ公然に3年間占有した後、甲土地がAの所有であることを知っているFに売却し、Fが所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を7年間占有した場合、Fは甲土地の所有権を時効取得することができる。

4 Aが甲土地を使用しないで20年以上放置していたとしても、Aの有する甲土地の所有権が消滅時効にかかることはない。

【解答及び解説】

【問 10】 正解 2

1 正しい。占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。したがって、Cは、Bの占有を承継しているので、Bの占有期間の17年間とC自身の占有期間の3年間を合計し、20年間甲土地を占有しているので、Cは甲土地の所有権を時効取得することができる。
*民法187条

2 誤り。10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の「開始の時」に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。この場合、占有者が途中で悪意になったとしても、善意無過失の占有として扱い、10年間で時効取得できる。
*民法162条2項

3 正しい。占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。そして、前者の占有を併せて主張する場合には、途中で悪意のFが占有を承継していたとしても、前者の占有は善意無過失で始まっているので、10年で時効取得することができる。
*民法187条

4 正しい。債権又は「所有権以外」の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。所有権は消滅時効にかからない。
*民法166条2項



【解法のポイント】肢2と肢3は理解できますでしょうか。肢2は一人の人が占有していて、途中で悪意に変わった場合です。肢3は、DからFに所有者が変わっていますが、Fが占有の承継を主張する場合は、Dから続く一つの占有を継続していると考えます。したがって、途中で人が変わって悪意の占有になったとしても、一人の人が途中で悪意に変わった場合と同様に考えて、占有の開始が善意無過失であるならば、10年で時効取得するということになります。いずれにしても、正解肢の肢2は過去に何度も出題されている問題ですから、確実に正解しないといけません。