下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和2年 問9

【動画解説】 宅建 辻説法

【問 9】 Aがその所有する甲建物について、Bとの間で、①Aを売主、Bを買主とする売買契約を締結した場合と、②Aを贈与者、Bを受贈者とする負担付贈与契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、これらの契約は、令和2年7月1日に締結され、担保責任に関する特約はないものとする。

1 ①の契約において、Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。

2 ②の契約が書面によらずになされた場合、Aは、甲建物の引渡し及び所有権移転登記の両方が終わるまでは、書面によらないことを理由に契約の解除をすることができる。

3 ②の契約については、Aは、その負担の限度において、売主と同じく担保責任を負う。

4 ①の契約については、Bの債務不履行を理由としてAに解除権が発生する場合があるが、②の契約については、Bの負担の不履行を理由としてAに解除権が発生することはない。

【解答及び解説】

【問 9】 正解 3

1 誤り。買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。そして、この「履行に着手」というのは、買主においては、内金や中間金の支払いなど代金の一部でも支払った場合を指すが、それだけではなく、「履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」も含まれるとされている(前掲最判昭40.11.24)。したがって、Bが履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合は、履行に着手したものと認められる。したがって、Aは手付の倍額を現実に提供しても契約の解除をすることはできない。
*民法557条1項

2 誤り。書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。そして、この「履行の終わった」というのは、不動産の場合には登記「又は」引渡しを指すものとされている(判例)。したがって、引渡し及び所有権移転登記のどちらかが終わった時点で解除することができなくなる。
*民法550条

3 正しい。負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
*民法551条2項

4 誤り。①の契約について、Bの債務不履行を理由としてAに解除権が発生する場合があるという点は正しい。しかし、負担付贈与については、贈与に関する規定に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定が準用されるので、Bの負担の不履行を理由としてAに解除権が発生することもある。
*民法553条



【解法のポイント】本問の肢1の事例は、なかなか難しい問題があって、微妙な感じがしますが、肢3が確実に正解ですので、それとの比較で言えば、「誤り」ということになると思います。こういうときは、確実な方を解答するのが鉄則です。