下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和2年 問5

【動画解説】 宅建 辻説法

【問 5】 AとBとの間で令和2年7月1日に締結された委任契約において、委任者Aが受任者Bに対して報酬を支払うこととされていた場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができるが、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。

2 Bは、契約の本旨に従い、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理しなければならない。

3 Bの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、BはAに対して報酬を請求することができない。

4 Bが死亡した場合、Bの相続人は、急迫の事情の有無にかかわらず、受任者の地位を承継して委任事務を処理しなければならない。

【解答及び解説】

【問 5】 正解 1

1 正しい。委任者(債権者)の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。しかし、委任者(債権者)の責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合は、反対給付の履行(報酬全額の支払い)を拒むことができない。この場合において、債務者(受任者)は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者(委任者)に償還しなければならない。
*民法648条3項1号参照、536条2項

2 誤り。受任者は、委任の本旨に従い、「善良な管理者の注意」をもって、委任事務を処理する義務を負う。
*民法644条

3 誤り。委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。受任者の責めに帰すべき事由は、委任者の責めに帰することができない事由の一つである。
*民法648条3項1号

4 誤り。委任が終了した場合において、「急迫の事情があるとき」は、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。受任者の死亡は、委任の終了事由であり(653条1号)、受任者の相続人は必要な処分をするだけであり、受任者の地位を承継するわけではない。
*民法654条



【解法のポイント】肢1は難しかったと思います。肢3と関連しますが、単純に条文に当てはまらない問題で、危険負担の条文を使う問題です。とりあえず保留にして、他の肢ができないといけないので、消去法で解答する、という感じでしょうか。