下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和2年 問3

【動画解説】 宅建 辻説法

【問 3】 次の1から4までの契約に関する記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。なお、これらの契約は令和2年4月1日以降に締結されたものとする。

(判決文)
法律が債務の不履行による契約の解除を認める趣意は、契約の要素をなす債務の履行がないために、該契約をなした目的を達することができない場合を救済するためであり、当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の履行を怠ったに過ぎないような場合には、特段の事情の存しない限り、相手方は当該契約を解除することができないものと解するのが相当である。

1 土地の売買契約において、売主が負担した当該土地の税金相当額を買主が償還する付随的義務が定められ、買主が売買代金を支払っただけで税金相当額を償還しなかった場合、特段の事情がない限り、売主は当該売買契約の解除をすることができない。

2 債務者が債務を履行しない場合であっても、債務不履行について債務者の責めに帰すべき事由がないときは付随的義務の不履行となり、特段の事情がない限り、債権者は契約の解除をすることができない。

3 債務不履行に対して債権者が相当の期間を定めて履行を催告してその期間内に履行がなされない場合であっても、催告期間が経過した時における債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、債権者は契約の解除をすることができない。

4 債務者が債務を履行しない場合であって、債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告することなく、直ちに契約の解除をすることができる。

【解答及び解説】

【問 3】 正解 2

1 正しい。判決文は、解除の趣旨は、「契約をなした目的」を達することができない場合を救済するためなので、契約をなした主たる目的の達成に必須的でない「附随的義務」の履行を怠ったに過ぎないような場合には、相手方は当該契約を「解除することができない」としている。したがって、本肢では、買主は売買代金を支払い、契約の主たる目的を達成しており、税金相当額を償還しないという付随的義務の不履行に過ぎないので、売主は契約を解除することはできない。

2 誤り。判決文は、「契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務」の履行がない場合に解除できないとしているのであり、「債務者の責めに帰すべき事由がない」ときは、それが付随的義務ではないとしているわけではない。

3 正しい。判決文は、解除の趣旨は、「契約をなした目的」を達することができない場合を救済するためなので、契約をなした主たる目的の達成に必須的でない「附随的義務」の履行を怠ったに過ぎないような場合には、相手方は当該契約を「解除することができない」としている。このような付随的義務の不履行の場合には、「債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微である」といえるので、本肢は判決文に反しているとはいえない。
*民法541条

4 正しい。判決文は、解除の趣旨は、「契約をなした目的」を達することができない場合を救済するためなので、契約をなした主たる目的の達成に必須的でない「附随的義務」の履行を怠ったに過ぎないような場合には、相手方は当該契約を解除することができないとしている。債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときに無催告解除ができるかどうかについては触れておらず、判決文に反するとはいえない。
*民法542条1項2号



【解法のポイント】本問のような「判決文」を読ませる形の出題は、判例は旧法に基づいて出されているはずなので、私は「法改正があった部分以外の部分から出題されるんだろうな」と漠然と考えていましたが、「解除」については法改正があった部分です。そこを、旧法から変更のない部分と変更のあった部分をうまく矛盾なくミックスさせて出題されており、「うまく出題したな」と感心しました。本試験問題は、不適切な問題があったときに、ネットなどでは批判される声ばかりが大きくなってしまいますが、いい問題は、いい問題だと評価することも必要でしょう。これはうまく工夫された問題です。