下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和2年 問2

【動画解説】 宅建 辻説法

【問 2】 令和2年7月1日に下記ケース①及びケース②の保証契約を締結した場合に関する次の1から4までの記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
(ケース①) 個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②) 個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合

1 ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。

2 ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。

3 ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。

4 保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。

【解答及び解説】

【問 2】 正解 4

1 誤り。ケース①の保証契約は、事業に係る債務についての保証契約であり、ケース②の保証契約は、個人根保証契約であるが、いずれも保証契約である以上、書面又は電磁的記録で行う必要がある。
*民法446条2項・3項

2 誤り。ケース①の保証契約は、事業に係る債務についての保証契約であるが、単なる事業資金の借り入れのみであり、主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約ではないと認められるので、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はない。しかし、ケース②の保証契約は、個人根保証契約であり、Eが個人の場合には極度額を定める必要がある。
*民法465条の6第1項、465条の2第2項

3 誤り。ケース①の保証契約は、事業に係る債務についての連帯保証契約であり、ケース②の保証契約は、個人根保証契約にかかる連帯保証契約であるが、いずれも連帯保証契約である以上、保証人には催告の抗弁権はない。なお、ケース①の事業に係る債務についての連帯保証契約である場合、保証人には催告の抗弁権がないことについて、公正証書により保証人になろうとする者の意思を確認する必要がある。
*民法465条の6第1項、465条の2第1項

4 正しい。保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示する必要があるのは、ケース①の事業に係る債務についての保証契約であり、ケース②の個人根保証契約では、公正証書による意思の表示は不要である。
*民法465条の6第1項、465条の2第1項



【解法のポイント】ケース①の事業に係る債務についての保証契約については、令和2年の法改正で新たに新設された規定ですが、個人根保証契約については、従来から存在する制度でしたが、これまで出題されたことがありませんでした。その意味で、法改正が多かった今回の試験において、わざわざこの範囲が出題されたことは意外でした。いずれにしても、個人根保証契約が初出題でしたので、間違えても仕方がない問題だと思います。