下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和元年 問11

【動画解説】法律 辻説法

【問 11】 甲土地につき、期間を60年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合(以下「ケース①」という。)と、期間を15年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合(以下「ケース②」という。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 賃貸借契約が建物を所有する目的ではなく、資材置場とする目的である場合、ケース①は期間の定めのない契約になり、ケース②では期間は15年となる。

2 賃貸借契約が建物の所有を目的とする場合、公正証書で契約を締結しなければ、ケース①の期間は30年となり、ケース②の期間は15年となる。

3 賃貸借契約が居住の用に供する建物の所有を目的とする場合、ケース①では契約の更新がないことを書面で定めればその特約は有効であるが、ケース②では契約の更新がないことを書面で定めても無効であり、期間は30年となる。

4 賃貸借契約が専ら工場の用に供する建物の所有を目的とする場合、ケース①では契約の更新がないことを公正証書で定めた場合に限りその特約は有効であるが、ケース②では契約の更新がないことを公正証書で定めても無効である。

【解答及び解説】

【問 11】 正解 3

1 誤り。賃貸借契約が建物を所有する目的ではなく、資材置場とする目的である場合、借地借家法の適用はなく、民法が適用され、その最長期間は50年となるので、ケース①では、それより長い期間を定めた場合は、50年に短縮される。ケース②では、15年の期間がそのまま認められる。
*民法604条1項

2 誤り。賃貸借契約が建物の所有を目的とする場合、借地借家法が適用されるが、その存続期間は最低30年とされ、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とされている。したがって、ケース①において存続期間の60年は、そのまま認められ、その場合に公正証書等の書面で契約することは必要とされていない。逆に、ケース②の15年という期間は無効とされ、期間は30年とされる。
*借地借家法3条

3 正しい。存続期間を50年以上として借地権を設定する場合に、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等「書面」によってしなければならない。なお、この定期借地権は建物の用途、目的は問われない。したがって、ケース①の特約は有効である。次に、専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上50年未満として借地権を設定する場合、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書によってしなければならない。本肢では、居住の用に供する建物の所有を目的とするので、この事業用定期借地権を定めることはできず、ケース②では、契約の更新がないことを書面で定めても無効であり、通常の借地権の設定と同様の扱いとなり、期間を15年と定めても、期間は30年となる。
*借地借家法22条、23条

4 誤り。存続期間を50年以上として借地権を設定する場合に、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等「書面」によってすればよい。したがって、ケース①の特約は公正証書で定めなくても、書面で定めれば有効である。なお、この定期借地権は建物の用途、目的は問われないので、専ら工場の用に供する建物の所有を目的とする場合でもよい。次に、専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上50年未満として借地権を設定する場合、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書によってしなければならない。したがって、ケース②の特約は有効である。
*借地借家法22条、23条



【解法のポイント】本問は、各肢についてケース①の場合と、ケース②の場合を考えなければならず、2問分解いたような感じで、何となく「損した」気分になりますが、各肢について、丁寧に問題文を追っていけば、難しい部分はなく、正解できると思います。