下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和元年 問5

【動画解説】法律 辻説法

【問 5】 次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び判例並びに下記判決文によれば、誤っているものはどれか。

(判決文)
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。けだし、無権代理人がした行為は、本人がその追認をしなければ本人に対してその効力を生ぜず(民法113条1項)、本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず、右追認拒絶の後に無権代理人が本人を相続したとしても、右追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではないからである。

1 本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合、その後は本人であっても無権代理行為を追認して有効な行為とすることはできない。

2 本人が追認拒絶をした後に無権代理人が本人を相続した場合と、本人が追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合とで、法律効果は同じである。

3 無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

4 本人が無権代理人を相続した場合、当該無権代理行為は、その相続により当然には有効とならない。

【解答及び解説】

【問 5】 正解 2

1 正しい。判決文によれば、本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は「本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず」としている。

2 誤り。判決文は、本人が追認拒絶をした「後」に無権代理人が本人を相続した場合、「無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である」としている。逆に、本人が追認拒絶をする「前」に無権代理人が本人を相続した場合、無権代理人が追認拒絶することは信義則上許されないとされているので(判例)、その法律効果は異なることになる。

3 正しい。本判決文は、無権代理行為の追認の遡及効については、特に触れておらず、判決文に矛盾するものではない。また、民法116条によると、無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない、とされており、民法の規定によれば正しい記述である。
*民法116条

4 正しい。本人が無権代理人を相続した場合について、判決文は触れておらず、判決文に矛盾するものではない。また、判例によれば、本人が無権代理人を相続した場合、本人は、本人としての立場で追認を拒絶することができるので、当該無権代理行為は、その相続により当然には有効とならない。


【解法のポイント】本問は、完全に定着した「判決文」を読ませるタイプの問題です。この手の問題は、いつも書いているように、判決文をしっかり読めば、解答できますので、落ち着いて判決文を読むことが大切です。内容的には、無権代理と相続という典型的な論点を扱っていますので、判決文の意味も分かったと思います。