下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和元年 問2

【動画解説】法律 辻説法

【問 2】 AがBに甲土地を売却し、Bが所有権移転登記を備えた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消した後、CがBから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えた場合、AC間の関係は対抗問題となり、Aは、いわゆる背信的悪意者ではないCに対して、登記なくして甲土地の返還を請求することができない。

2 AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消す前に、Bの詐欺について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えていた場合、AはCに対して、甲土地の返還を請求することができる。

3 Aの売却の意思表示の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものの錯誤がある場合、Aに重大な過失がなければ、Aは、Bから甲土地を買い受けた善意無過失Cに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができない。

4 Aの売却の意思表示の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものについて錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、原則として錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。

【解答及び解説】

【問 2】 正解 4

1 正しい。本肢のCは取消後の第三者ということになり、AとCは二重譲渡類似の関係となり、対抗問題となる。したがって、Cが背信的悪意者でなければ、AはCに対して登記なく土地の返還を請求することはできない。
*民法177条

2 正しい。詐欺による意思表示の取消しは、「善意」の第三者に対抗することができない。したがって、本肢のCは悪意であるから、いくら登記を備えていたとしても、AはCに対して土地の返還を請求することができる。
【改正法】詐欺による意思表示の取消しは、「善意無過失」の第三者に対抗することができない。したがって、本肢のCは悪意であるから、いくら登記を備えていたとしても、AはCに対して土地の返還を請求することができる。
*民法96条3項

3 正しい。意思表示は、法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものの錯誤があり、表意者に重大な過失がなければ、取り消すことができる。ただし、この意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
*民法95条4項

4 誤り。意思表示は、法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものについて錯誤があり、表意者に重大な過失がなければ、取り消すことができるが、表意者に重大な過失があれば原則として取り消すことはできない。
*民法95条3項



【解法のポイント】本問は、来年の民法の債権関係の大改正で変更される部分の出題です。通常、法改正が分かっている部分は、出題されにくいんですが、さすがに民法の大改正は多岐にわたるため、これを避けて出題するのはかえって不自然です。その意味では、こういう出題も予想されたところです。なお、本問は、意思表示の問題としては非常に基本的なものです。