下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成30年 問4

【動画解説】法律 辻説法

【問 4】 時効の援用に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。

2 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。

3 詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。

4 債務者が時効の完成の事実を知らずに債務の承認をした場合、その後、債務者はその完成した消滅時効を援用することはできない。

【解答及び解説】

【問 4】 正解 2

1 正しい。時効は、当事者(消滅時効にあっては、「保証人」、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。これは、主たる債務者が時効の利益を放棄した場合でも同様である。
*民法145条

2 誤り。時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について「正当な利益を有する者」を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権が時効消滅すると、抵当権の順位が上昇し配当額が増加する利益があるが、これはあくまで抵当権の順位上昇による反射的利益にすぎず、時効の完成により直接利益を受けるとはいえないので、後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することはできない(最判平11年10月21日)。
*民法145条

3 正しい。時効を援用することができる者は、当事者及び時効の完成により直接利益を受ける者である。詐害行為の受益者は、債権者の有する被保全債権が時効消滅すれば、詐害行為によって得ていた利益の喪失を免れることができるので、時効の完成により直接利益を受ける者に該当する。
*民法145条

4 正しい。債務者が時効の完成後に債務の承認をした場合、時効完成の事実について債務者の知・不知にかかわらず、債務者は消滅時効の援用をすることはできない。



【解法のポイント】本問の肢1と肢4は過去問の範囲で解けますが、肢2と肢3はかなりの難問といえるでしょう。その意味では間違えても仕方がない問題のような気がします。