下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成29年 問10

【動画解説】法律 辻説法

【問 10】 ①不動産質権と②抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 ①では、被担保債権の利息のうち、満期となった最後の2年分についてのみ担保されるが、②では、設定行為に別段の定めがない限り、被担保債権の利息は担保されない。

2 ①は、10年を超える存続期間を定めたときであっても、その期間は10年となるのに対し、②は、存続期間に関する制限はない。

3 ①は、目的物の引渡しが効力の発生要件であるのに対し、②は、目的物の引渡しは効力の発生要件ではない。

4 ①も②も不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。

【解答及び解説】

【問 10】 正解 1

1 誤り。不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない。これに対し、抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。問題は、記述が逆である。
*民法358条、375条1項

2 正しい。不動産質権の存続期間は、10年を超えることができない。設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、10年とする。これに対し抵当権については、存続期間に関する制限は規定されていない。
*民法360条

3 正しい。不動産質権を含む質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。これに対し、抵当権者は、債務者又は第三者が「占有を移転しないで」債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有するもので、目的物の引渡しは効力の発生要件とはされていない。
*民法344条、369条1項

4 正しい。不動産質権も抵当権も不動産に関する物権であり、登記が第三者に対する対抗要件となっている。
*民法177条



【解法のポイント】本問は、不動産質権というあまりポピュラーではない論点を含む問題で、ビックリした受験生が多かったと思われますが、この問題では、肢1の、しかも②の抵当権において、被担保債権は、満期となった最後の2年分については抵当権を行使することができるという基本的な知識一本で正解を導くことができたので、結果的には簡単な問題となっています。しかし、この問題が出題されたことにより、今後不動産質権の問題が出題される可能性は高まったと思われますので、気を付けた方がいいでしょう。ちょうど、この問題は抵当権との比較の問題ですので、よいまとめになるものと思われます。