下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成29年 問7

【動画解説】法律 辻説法

【問 7】 請負契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 請負契約が請負人の責めに帰すべき事由によって中途で終了し、請負人が施工済みの部分に相当する報酬に限ってその支払を請求することができる場合、注文者が請負人に請求できるのは、注文者が残工事の施工に要した費用のうち、請負人の未施工部分に相当する請負代金額を超える額に限られる。

2 請負契約が注文者の責めに帰すべき事由によって中途で終了した場合、請負人は、残債務を免れるとともに、注文者から請負代金全額を受ける権利を失わないが、自己の債務を免れたことによる利益を注文者に償還しなければならない。

3 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき、注文者は、請負人から不適合部分の追完に代わる損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。

4 請負人が担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。

【解答及び解説】

【問 7】 正解 3

1 正しい。請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合において、残工事の施工に要した費用として、注文者が請負人に賠償を請求することができるのは、右費用のうち、未施工部分に相当する請負代金額を超える部分に限られる(判例、最判 昭60.5.17)。
*民法416条

2 正しい。債権者(注文者)の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者(請負人)は、反対給付(請負代金)を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
*民法536条2項

3 誤り。請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したときの損害賠償義務の履行は、注文者の報酬支払いと同時履行の関係にある。したがって、注文者が、請負人から追完に代わる損害の賠償を受けていないのならば、報酬全額を支払う必要はない。

4 正しい。請負人が担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。
*民法572条


【解法のポイント】この問題は、難しかったのではないでしょうか。肢1は、問題文自体が、何を言わんとしているのか分かりにくかったという人が多かったのではないかと思います。肢2と肢3は、過去問で出題されていますが、過去問としても難しい部類で、全体として難易度の高い問題だったと思われます。