下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成29年 問3

【動画解説】法律 辻説法

【問 3】 次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。

(判決文)
共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできないが、現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないと解するのが相当である。

1 共有者は、他の共有者との協議に基づかないで当然に共有物を排他的に占有する権原を有するものではない。

2 AとBが共有する建物につき、AB間で協議することなくAがCと使用貸借契約を締結した場合、Bは当然にはCに対して当該建物の明渡しを請求することはできない。

3 DとEが共有する建物につき、DE間で協議することなくDがFと使用貸借契約を締結した場合、Fは、使用貸借契約を承認しなかったEに対して当該建物全体を排他的に占有する権原を主張することができる。

4 GとHが共有する建物につき、Gがその持分を放棄した場合は、その持分はHに帰属する。

【解答及び解説】

【問 3】 正解 3

1 正しい。各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。したがって、共有者は、他の共有者との協議に基づかないで当然に共有物を排他的に占有する権原を有するものではない。本問判決文も、共有者が共有物を排他的に占有する権原を有しないことを前提に、その「共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできない」としている。
*民法249条

2 正しい。判決文は、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は、共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者に対して、当然には共有物の明渡しを請求することはできない、としている。したがって、Bは当然にはCに対して当該建物の明渡しを請求することはできない。

3 誤り。判決文は、「共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできない」としており、Fは、使用貸借契約を承認しなかったEに対して当該建物全体を排他的に占有する権原を主張することはできない。

4 正しい。共有者の一人が、その持分を放棄したときは、その持分は、他の共有者に帰属する。これは、判決文とは矛盾しない。
*民法255条


【解法のポイント】判例を読ませる形の問題は、毎年1問出題するということですっかり定着している感があります。本問も、落ち着いて判決文を読めば、肢3が判決文と真っ向から反対の趣旨を述べていることは理解できたと思います。