下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 平成27年 問9
【問 9】 土地の転貸借に関する次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。
(判決文)
土地の賃借人が賃貸人の承諾を得ることなく右土地を他に転貸しても、転貸について賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が民法第612条第2項により賃貸借を解除することができない場合において、賃貸人が賃借人(転貸人)と賃貸借を合意解除しても、これが賃借人の賃料不払等の債務不履行があるため賃貸人において法定解除権の行使ができるときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は、転借人に対して右合意解除の効果を対抗することができず、したがって、転借人に対して賃貸土地の明渡を請求することはできないものと解するのが相当である。
(判決文)
土地の賃借人が賃貸人の承諾を得ることなく右土地を他に転貸しても、転貸について賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が民法第612条第2項により賃貸借を解除することができない場合において、賃貸人が賃借人(転貸人)と賃貸借を合意解除しても、これが賃借人の賃料不払等の債務不履行があるため賃貸人において法定解除権の行使ができるときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は、転借人に対して右合意解除の効果を対抗することができず、したがって、転借人に対して賃貸土地の明渡を請求することはできないものと解するのが相当である。
1 土地の賃借人が無断転貸した場合において賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が無断転貸を理由に賃貸借契約を解除できないときであっても、賃貸借契約を合意解除したときは、賃貸人は転借人に対して賃貸土地の明渡しを請求することができる。
2 土地の賃貸人が転貸借について承諾を与えた場合には、賃貸人は、無断転貸を理由としては賃貸借契約を解除することはできないが、賃借人と賃貸借契約を合意解除することは可能である。
3 土地の賃借人が無断転貸した場合、賃貸人は、賃貸借契約を民法第612条第2項により解除できる場合とできない場合があり、土地の賃借人が賃料を支払わない場合にも、賃貸人において法定解除権を行使できる場合とできない場合がある。
4 土地の賃借人が無断転貸した場合、転借人は、賃貸人と賃借人との間で賃貸借契約が合意解除されたとしても、賃貸人からの賃貸土地の明渡し請求を拒絶することができる場合がある。
【解答及び解説】
【解法のポイント】ここのところ毎年出題されている判決文を読ませる形の問題です。普通に判決文を読めば、肢1が誤っていることは理解できたのではないかと思います。
【問 9】 正解 1
1 誤り。判決文では、「賃貸人が賃借人(転貸人)と賃貸借を合意解除しても … 賃貸人は、転借人に対して右合意解除の効果を対抗することができず、したがって、転借人に対して賃貸土地の明渡を請求することはできない」としている。
2 正しい。判決文は、賃貸人は、「転借人」に対して合意解除の効果を「対抗」することができないとしているだけなので、賃貸人は賃借人と合意解除をすることはできるし、賃貸人は「賃借人」に対しては合意解除の効果を主張することができる。
3 正しい。判決文は、「転貸について賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が民法第612条第2項により賃貸借を解除することができない場合」としており、土地の賃借人が無断転貸した場合、賃貸人は、賃貸借契約を民法第612条第2項により解除できる場合とできない場合があるとしている。また、土地の賃借人が賃料を支払わない場合でも、1~2ヵ月程度の軽微な不払いであれば、背信行為と認めるに足りない特段の事情があるとされる場合があり、賃貸人において法定解除権を行使できない場合もある。以上を前提に、判決文は、「賃借人の賃料不払等の債務不履行があるため賃貸人において法定解除権の行使が『できる』ときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は、転借人に対して右合意解除の効果を対抗することができ」ないとしている。
4 正しい。判決文は、無断転貸の場合であっても、賃貸人・賃借人間の合意解除の効果は、転借人に対抗できないとしており、転借人は、賃貸人からの賃貸土地の明渡し請求を拒絶することができる場合がある。