下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成26年 問14

【動画解説】法律 辻説法

【問 14】 不動産の登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 表示に関する登記を申請する場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。

2 新たに生じた土地又は表題登記がない土地の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。

3 信託の登記の申請は、当該信託に係る権利の保存、設定、移転又は変更の登記の申請と同時にしなければならない。

4 仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるときは、当該仮登記の登記権利者が単独で申請することができる。

【解答及び解説】

【問 14】 正解 1

1 誤り。「権利」に関する登記を申請するときは、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を登記所に提供しなければならないが、「表示」に関する登記を申請する場合には、登記原因を証する情報は不要である。
*不動産登記令7条1項5号ロ

2 正しい。条文そのままの文章。新たに生じた土地又は表題登記がない土地の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。

【じっくり解説】

条文のそのままの文章なので、「正しい」ということになります。不動産登記法の条文としては、不動産登記法36条です。

「新たに生じた土地又は表題登記がない土地の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。」

登記記録の最初は表題登記で、不動産が新しくできたときに登記記録を作成するという点は、みなさん御存じでしょう。

その最初の表題登記を申請するのは、本問は土地の場合ですから、土地が新しくできた場合の最初の所有者です。

土地が新たに生じる場合というのはあまりないと思いますが、たとえば、海底隆起や公有水面の人為的な埋立てなどよって生じるでしょう。つまり、土地の原始取得の場合です。

以上は当たり前で、解説の必要もないくらいですが、本条の申請義務者を見ると、「新たに生じた土地の所有権を取得した者」又は「表題登記がない土地の所有権を取得した者」と書かれています。

つまり、「新たに生じた土地の所有権を取得した者」だけでなく、「表題登記がない土地の所有権を取得した者」も表題登記を申請することができますので、この問題に考え込んだ人は、この部分がひっかかったと思いますが、一度この条文を読んでおけば大丈夫でしょう。

「表題登記がない土地の所有権を取得した者」というのは、具体的には未登記の土地を買い受けた者などです。

一度表題登記がなされた土地について、買主がいきなり「保存登記」をすることはできませんが、表題登記もなされていない土地を購入した買主は、表題登記を申請することができます。

最後に類題として、この条文と同じ内容が、「建物」についてもありますが、これは前に一度ちょっと説明したことがあります。

条文の内容と問題を掲載しておきますので確認しておいて下さい。

不動産登記法47条1項(建物の表題登記の申請)

「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。」

過去問類題[H21-14(3)]

「表題登記がない建物(区分建物を除く。)の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。」

【解答】正しい

*不動産登記法36条

3 正しい。条文そのままの文章。信託の登記の申請は、当該信託に係る権利の保存、設定、移転又は変更の登記の申請と同時にしなければならない。

【じっくり解説】

本問の根拠条文は、不動産登記法98条1項です。

「信託の登記の申請は、当該信託に係る権利の保存、設定、移転又は変更の登記の申請と同時にしなければならない。」

問題文と全く同一の文章です。普通の解説は、ここで終わりですが、この「じっくり解説」では、簡単に信託の登記というのは、どういうものか説明しておきましょう。

みなさんの勉強状況は様々だと思いますが、実は法令上の制限の国土利用計画法の中に、この「信託」というのがちょっと出てきますので、その意味でも説明が必要でしょう。

そもそも信託というのは、「特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。」と信託法2条1項で定義されています。簡単に言えば、土地などの管理や処分を受託者(信託会社など)に任せるものです。

この土地の管理などを受託者に任せるにあたって、受託者に土地の所有権移転登記をするなどの形をとります。したがって、この移転登記は単純な移転登記ではなく、信託の目的のためのもので、そのことを公示する必要があります。これを信託の登記(受託者名義の権利が信託財産であることを示す登記)というわけです。

そして登記の正確性を確保するために所有権移転登記と同時に、信託の登記も申請しなさい、というのが本条項の意味です。ということで、理解した上で、上記の条文を読めば問題はないと思います。

*不動産登記法98条1項

4 正しい。仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるとき及び仮登記を命ずる処分があるときは、当該仮登記の登記権利者が単独で申請することができる。
*不動産登記法107条1項


【解法のポイント】本問は正解肢は肢1ですが、「登記原因を証する情報」(例:売買契約書)の意味が分かっていれば、表示登記では不要だということは分かったと思います。肢3は難しかったと思いますが、肢1が正解なので、問題はありません。