下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成24年 問28

【動画解説】法律 辻説法

【問 28】 宅地建物取引業者が行う広告に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

ア 建物の所有者と賃貸借契約を締結し、当該建物を転貸するための広告をする際は、当該広告に自らが契約の当事者となって貸借を成立させる旨を明示しなければ、法第34条に規定する取引態様の明示義務に違反する。

イ 居住用賃貸マンションとする予定の建築確認申請中の建物については、当該建物の貸借に係る媒介の依頼を受け、媒介契約を締結した場合であっても、広告をすることができない。

ウ 宅地の売買に関する広告をインターネットで行った場合において、当該宅地の売買契約成立後に継続して広告を掲載していたとしても、最初の広告掲載時点で当該宅地に関する売買契約が成立していなければ、法第32条に規定する誇大広告等の禁止に違反することはない。

エ 新築分譲住宅としての販売を予定している建築確認申請中の物件については、建築確認申請中である旨を表示をすれば、広告をすることができる。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ

【解答及び解説】

【問 28】 正解 1

ア 誤り。自ら貸借(転貸)する行為は、宅地建物取引業に該当しないので、取引態様の明示の規定も適用されない。

【じっくり解説】

本日の問題は、「取引態様の明示」についての問題ですが、一つの「肢」で、範囲の異なる2つの知識をまとめて覚えてしまおうという、「じっくり解説」にふさわしい問題を取り上げましょう。

この問題自体は、簡単だったと思います。宅地建物取引業法で最初に勉強する「宅地建物取引業の意義」で、自ら貸借は宅地建物取引業に該当しないので、宅地建物取引業法の規定の適用はなく、したがって、宅地建物取引業の免許も不要であるということです。

また、宅地建物取引業法の規定の適用がないので、取引態様の明示義務もなく、取引態様を明示しなくても宅地建物取引業法に違反しない。

そして、本問は、「転貸」の事例ですが、「自ら転貸」も「自ら貸借」に該当するので、自ら転貸をするときにも取引態様の明示は不要で、正解は「誤り」ということになります。

これだけだと一通り勉強した人には、解説も不要なくらいです。

ところで、取引態様の明示は「広告」と「注文を受けたとき」の両方で必要です。つまり、取引態様の明示は、広告に関する規制でもあるわけです。そして、広告に関する問題は、「税その他」の中の景品表示法(及び不動産の表示に関する公正競争規約)でも出題されます。

この公正競争規約の中で、取引態様の条文があります。

公正競争規約10条1号『取引態様は、「売主」、「貸主」、「代理」又は「媒介(仲介)」の別をこれらの用語を用いて表示すること。』という条文です。

この規定の一般的な解説は別の機会に譲るとして、この条文の中で「貸主」という言葉に注目して下さい。「貸主」というのは、「自ら貸主」という意味です。公正競争規約というのは、「宅地建物取引業」だけでなく、「不動産の取引」全般について規制されるものですから、「自ら貸借」の場合も規制があるわけです。この条文は、宅建本試験では、出題頻度はそれほどではありませんが、目を通しておく必要がある条文です。

ということで、取引態様の明示と公正競争規約の条文の2つをしっかり覚えて下さい。

*宅建業法2条2項

イ 正しい。宅地建物取引業者は、建物の建築に関する工事の完了前においては、建築確認を受けた後でなければ、当該工事に係る建物に関する広告をしてはならない。これは、当該建物の貸借に係る媒介契約を締結した場合であっても同様である。
*宅建業法33条

ウ 誤り。売買契約成立後においても、当該物件の広告を掲載した場合は、取引できない物件の広告ということになり、おとり広告に該当することがあり、誇大広告の禁止の規定に違反することになる。なお、インターネットによる広告も誇大広告の禁止の規制の対象となる。
*宅建業法32条

エ 誤り。宅地建物取引業者は、建物の建築に関する工事の完了前においては、建築確認を受けた後でなければ、当該工事に係る建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない。これは、建築確認申請中である旨の表示をしていても同様である。
*宅建業法33条
以上より、正しいものは肢イの一つとなり、肢1が正解となる。


【解法のポイント】今年、数が多かったということで話題になった「個数問題」の最初です。個数問題については、特に決定的な対策はないと思います。個数問題は、基本的に個々の肢は難しくないので(個々の肢が難しければ、それは非常に難解な問題ということで、合否に影響しない難問になります。)、一つ一つ丹念に正確に答えていくしかありません。ちょっと宣伝になりますが、宅建通信学院の過去問集は、一問一答形式ですので、これに勝る個数問題対策はないと思います。一問一答形式は、一つ一つの肢の正誤を判断していくので、全問個数問題みたいなものだからです。