下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成24年 問15

【問 15】 国土利用計画法第23条の届出(以下この問において「事後届出」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 土地売買等の契約による権利取得者が事後届出を行う場合において、当該土地に関する権利の移転の対価が金銭以外のものであるときは、当該権利取得者は、当該対価を時価を基準として金銭に見積った額に換算して、届出書に記載しなければならない。

2 市街化調整区域においてAが所有する面積4,000㎡の土地について、Bが一定の計画に従って、2,000㎡ずつに分割して順次購入した場合、Bは事後届出を行わなければならない。

3 C及びDが、E市が所有する都市計画区域外の24,000㎡の土地について共有持分50%ずつと定めて共同で購入した場合、C及びDは、それぞれ事後届出を行わなければならない。

4 Fが市街化区域内に所有する2,500㎡の土地について、Gが銀行から購入資金を借り入れることができることを停止条件とした売買契約を、FとGとの間で締結した場合、Gが銀行から購入資金を借り入れることができることに確定した日から起算して2週間以内に、Gは事後届出を行わなければならない。

【解答及び解説】

【問 15】 正解 1

1 正しい。事後届出の際の届出書には、「土地売買等の契約に係る土地の土地に関する権利の移転又は設定の対価の額」を記載しなければならないが、対価が金銭以外のものであるときは、これを時価を基準として金銭に見積った額を記載する必要がある。

【じっくり解説】

この問題は、「国土法」の届出事項についての問題ですが、届出事項と勧告の審査対象についても含めて解説しましょう。

そもそも、事後届出の必要な「土地売買等の契約」というのは、「対価」を得て行う契約に限ります。そして、この「対価」というのは、必ずしも金銭に限りません。たとえば、土地の交換契約の場合は、交換の対象となった土地自体が対価です。そして、事後届出の届出事項の中に「対価の額」というのがありますが、対価が金銭でない場合はどうすればいいのか、というのが問題の趣旨です。

これは条文にそのまま書いてありますが、対価が金銭でない場合は、「対価が金銭以外のものであるときは、これを時価を基準として金銭に見積った額」を届け出ることになります。したがって、本問は「正しい」となります。

ところで、この届出事項と関連して、勧告の対象についても覚えておいて下さい。もともと、事後届出制というのは、法改正で付け加わったもので、本来はこんな制度はありませんでした。以前は、許可制と事前届出制しかなかったんです。この許可制と事前届出制時代の国土法の趣旨は、地価の高騰抑制というのが中心でした。しかし、バブルが崩壊して地価が長期的に下落している中で、「地価の高騰抑制」から、「土地の有効利用」に制度の力点がおかれることになり、そのときに事後届出制が法改正で付け加わったわけです。

ところで、事後届出がなされ、その取引が不適当であったと判断された場合、都道府県知事より勧告がなされますが、この勧告の審査対象の中に、「対価の額」というのは、含まれておらず、「土地の利用目的」のみが審査の対象となります。このあたりは試験に問われますので注意して下さい。「対価の額」と「土地の利用目的」は届出をする必要はありますが、審査の対象となるのは「土地の利用目的」のみであり、「対価の額」は勧告の審査の対象になりません。

これは、「地価の高騰抑制」から、「土地の有効利用」に制度趣旨が移り変わった一つの現れです。

*国土利用計画法23条1項6号

2 誤り。市街化調整区域内の土地について事後届出が必要なのは、その面積が5,000㎡以上の場合である。したがって、4,000㎡の本肢においては、事後届出は不要である。
*国土利用計画法23条2項1号ロ

3 誤り。当事者の一方又は双方が国又は地方公共団体である場合には、その土地の面積のいかんを問わず、事後届出は不要である。
*国土利用計画法23条2項3号

4 誤り。停止条件付の売買契約を締結した場合は、その売買契約の締結の日から2週間以内に事後届出を行う必要があり、条件が成就したときに改めて届出をする必要はない。
*国土利用計画法23条1項


【解法のポイント】肢1の内容は初出題だと思いますが、常識的に判断できると思いますし、肢2~肢4までは簡単だったと思いますので、消去法でも正解にたどり着くことができたと思います。