下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成24年 問5

【問 5】 次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、明らかに誤っているものはどれか。
(判決文)
請負人が建築した建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかはない場合に、当該建物を収去することは社会経済的に大きな損失をもたらすものではなく、また、そのような建物を建て替えてこれに要する費用を請負人に負担させることは、契約の履行責任に応じた損害賠償責任を負担させるものであって、請負人にとって過酷であるともいえないのであるから、建て替えに要する費用相当額の損害賠償請求をすることを認めても、民法第635条ただし書の規定の趣旨に反するものとはいえない。

1 請負の目的物である建物の瑕疵が重要でない場合であって、その修補に過分の費用を要するときは、注文者は瑕疵の修補を請求することはできない。

2 請負の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には、注文者は、請負人に対し、建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償請求をすることができる。

3 請負の目的物が建物であって、民法第635条ただし書によって注文者が請負契約の解除をすることができない場合には、その規定の趣旨に照らし、注文者は建て替えに要する費用相当額の損害賠償請求をすることは認められない。

4 請負の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合であっても、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求は、請負人が当該建物を引き渡した時から1年以内にしなければならない。

【解答及び解説】

【問 5】 正解 3及び4

本問の判決文は、請負人が建築した建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかはない場合に、建て替えに要する費用相当額の損害賠償請求をすることを認めても、建物について解除権を否定した規定の趣旨に反するものとはいえないとしたものである。

1 明らかに誤っているとはいえない。本肢は、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要する場合の「瑕疵修補請求権」を否定した条文であり、先ほどの「解除権」に関する判決文に矛盾するものではない。
*民法634条1項

2 誤っているとはいえない。本肢の内容は、上記判決文と同趣旨の内容であり、判決文と矛盾するものではない。
*民法635条

3 明らかに誤っている。判決文は、請負人が建築した建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかはない場合に、建て替えに要する費用相当額の損害賠償請求を認めるものであり、注文者は建て替えに要する費用相当額の損害賠償請求を否定する本肢は、明らかに矛盾している。
*民法635条

4 明らかに誤っている。建物の請負人の担保責任の期間は、建物の引渡しの後5年間である。ただし、コンクリート造等の建築物については、10年とされている。建物を引き渡した時から1年以内ではない。
*民法638条1項


※ 肢3については、「判決文」と完全に矛盾する記述である。しかし、「判決文」は損害賠償の額に関する文章であり、損害賠償請求の期間に関する文章である肢4とは矛盾するとはいえず、「判決文」からは「明らかに誤っている」とはいえないと思われる。しかし、問題文は「『民法の規定』及び下記判決文によれば」となっており、肢4は解説の通り、「民法の規定」からいえば、「明らかに誤っており」、肢4も正解とされたものと思われる。

【解法のポイント】この問題は、財団法人 不動産適正取引推進機構の発表で、肢3と肢4の両方が正解肢となっています。注意して下さい。