下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成23年 問14

【問 14】 不動産の登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆の登記は、することができない。

2 権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。

3 受益者又は委託者は、受託者に代わって信託の登記を申請することができる。

4 仮登記の抹消は、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

【解答及び解説】

【問 14】 正解 4

1 正しい。所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆の登記はすることができない。
*不動産登記法41条5号

2 正しい。権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。

【じっくり解説】

この問題の根拠となる条文は、不動産登記法66条です。「権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。」

実は、この不動産登記法66条には、条文中にかっこ書きがありますが、それを除くと上記のように、問題文と全く同一文章になります。したがって、正解は「正しい」ということになります。

この条文は、何となく「正しい」というのは、分かる感じの文章だと思います。一応、具体例を入れて解説しておきます。

たとえば、第一順位の抵当権の被担保債権を3,000万円とすべきところを、誤って1,000万円とした後に、第二順位の抵当権(被担保債権が1,000万円)が設定された場合に、第一順位の被担保債権を3,000万円とするため、更正の登記を付記登記として行えば、付記登記は主登記の順位によるので(第4条2項)、第二順位の抵当権者の利益が害されてしまいます。

そこで、第一順位の被担保債権の更正の登記を付記登記でするには、第二順位の抵当権者がいないか、第二順位の抵当権者の承諾がある場合に限っているのが本条です。

したがって、上記の例で、第二順位の抵当権者の承諾がなければ、第一順位の抵当権は被担保債権が1,000万円、第二順位の抵当権の被担保債権も1,000万円、そして、もともとの第一順位の抵当権者の被担保債権の残額2,000万円は、第三順位の抵当権として登記せざるを得ません。

これで、「何となく分かる」から、具体例も含めて分かったと思いますので、覚えておいて下さい。

*不動産登記法66条

3 正しい。受益者又は委託者は、受託者に代わって信託の登記を申請することができる。

【じっくり解説】

本問に関する条文は、不動産登記法99条の「受益者又は委託者は、受託者に代わって信託の登記を申請することができる。」という条文で、これも一言一句、条文と同じ文章です。したがって、この問題は「正しい」ということになります。

ところで、信託の登記というのは、土地などの管理や処分を受託者(信託会社など)に任せるものですが、土地の管理などを受託者に任せるにあたって、受託者に土地の所有権移転登記をする形をとります。本条では、「受益者」「委託者」「受託者」という3つが出てきますので、それを説明しましょう。

不動産の管理などの委託をするのが「委託者」、その委託を受ける信託会社などが「受託者」で、これは分かるでしょう。「受益者」というのは、これは信託による財産の運用などよって利益を受ける者のことです。たとえば、親(委託者)が子(受益者)のために、不動産の運用を信託会社(受託者)に任せたような場合です。

もともと信託の登記というのは、委託者から受託者に対する移転登記が、単純な移転登記ではなく、信託の目的であることを公示するものです。したがって、この場合、受託者が信託の登記をしてくれなければ、普通に受託者(信託会社等)名義の不動産の登記になってしまい困ります。そこで、受託者が信託の登記に協力してくれなかった場合、受益者又は委託者が、受託者に代わって信託の登記を申請することを認めた規定です。

*不動産登記法99条

4 誤り。仮登記の抹消は、仮登記の登記名義人が単独で申請することができる。
*不動産登記法110条


【解法のポイント】本問は、肢2と肢3が非常に難解な問題ですが、正解肢の肢4は過去問で出題されています。したがって、これも難しい問題は無視して、肢4が正解だと分からないといけません。本問は条文のそのままの問題ですが、最近は、不動産登記法の問題は条文そのままの問題が多いですね。