宅建 過去問解説 平成23年 問7
【じっくり解説】
「先取特権」というのは、宅建試験の中では、何となく中途半端な位置付けだと思います。めったに試験に出題されませんが、かといって、過去問を見て行くと、数は少ないけれども、ある程度の出題はあるので、無視すべきかどうか判断に迷うような感じですね。私の個人的な意見としては、それほどに気にする必要はなく、試験直前に余裕があって、気になるのであれば、勉強しておくのに越したことはない、という感じでしょうか。ただ、試験直前に勉強するにしても、宅建の本ではあまり解説がないので、勉強しにくい感じなので、この「じっくり解説」で取り上げます。
まずは、「先取特権」というのは、どういうものかです。民法には、担保物権として今まで説明してきた抵当権、質権、留置権の他に「先取特権」というのが規定されています。この先取特権というのは、ある状況の下では(特定の債権については)、法律が他の債権者に優先して弁済が受けることができるようにしてくれている担保物権です。この先取特権は、当事者が約定(合意)して担保物権を設定する必要はなく、約定がなくても担保物権の成立を法律が定めてくれているので、法定担保物権の一つです。
この先取特権は、抵当権と同様、債務者の財産を競売にかけて、その競売代金の中から他の債権者に先立って優先的に弁済を受けることができるという優先弁済権がありますので、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭等に対しても行使できます(物上代位性)。もちろん、抵当権と同様、その払渡し又は引渡しの前に差押えが必要です。
ということで、本問を見てみましょう。A→B→Cの転貸の事例で、「Aは、Bに対する賃料債権に関し、Bが建物に備え付けた動産について先取特権を有する」という部分ですが、これは正しい。条文があります。民法313条(不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲)の第2項です。
「建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。」という条文ですが、この条文より正しいといえます。
次に、「Aは、Bに対する賃料債権に関し、BのCに対する賃料債権について先取特権を有する。」という部分についてですが、これは先ほど説明した先取特権には物上代位性があるという点から正しい、ということになります。抵当権で勉強するように、賃料も物上代位の対象です。ということで、本問は全体として「正しい」ということになります。