下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 平成23年 問3
【問 3】 共有に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるが、5年を超えない期間内であれば、分割をしない旨の契約をすることができる。
2 共有物である現物の分割請求が裁判所になされた場合において、分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は共有物の競売を命じることができる。
3 各共有者は、共有物の不法占拠者に対し、妨害排除の請求を単独で行うことができる。
4 他の共有者との協議に基づかないで、自己の持分に基づいて1人で現に共有物全部を占有する共有者に対し、他の共有者は単独で自己に対する共有物の明渡しを請求することができる。
【解答及び解説】
【問 3】 正解 4
1 正しい。各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
*民法256条1項
2 正しい。共有物の分割について、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
*民法258条2項
3 正しい。共有物の不法占拠者に対する妨害排除の請求は、共有物の保存行為に該当する(判例)。したがって、各共有者は単独で行うことができる。
*民法252条
4 誤り。各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。したがって、自己の持分に基づいているならば各共有者は共有物全部を占有することができる。
【じっくり解説】
この問題は、結構、普通に「○」と考える人も多いのではないかと思います。しかし、「×」です。「○」と考える理由も分かります。「1人で現に共有物全部を占有」しているわけですから、他の共有者は単独で自己に対して共有物の明渡しを請求することができるのではないか、ということです。
ここで、民法の条文を見ておきましょう。
(共有物の使用)、
第249条 各共有者は、共有物の「全部」について、その「持分に応じた使用」をすることができる。
つまり、共有者は共有物の「全部」を使用できますが、それはあくまで「持分に応じた」ものにすぎないということです。
しかし、問題文は「自己の持分に基づいて」1人で現に共有物全部を占有していると書かれています。各共有者は、共有物の「全部」を使用できるわけですから、共有者の一人が「自己の持分に基づいて」いる限り、明渡しは請求することができないということです。
この「持分に基づいて」というのは、具体的には使用回数などが例として挙げられますから、たとえば、共有者のA及びBが1日おきに共有物を使うというような場合に、Aは、1日おきに利用している限り、共有物を全部占有できるわけです。ただ、Aが毎日利用しており、Bに1日おきに利用させないような場合は、Bの利用を侵害している範囲で、その妨害排除を請求できるだけです。つまり、「1日おきに利用させろ」ということまではいえるが、完全に「明け渡せ」とまではいえません。
*民法249条
【解法のポイント】この問題も非常に基本的なものだったと思います。