下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 平成22年 問6
【問 6】 両当事者が損害の賠償につき特段の合意をしていない場合において、債務の不履行によって生ずる損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 債権者は、債務の不履行によって通常生ずべき損害のうち、契約締結当時、両当事者がその損害発生を予見していたものに限り、賠償請求できる。
2 債権者は、特別の事情によって生じた損害のうち、契約締結当時、両当事者がその事情を予見していたものに限り、賠償請求できる。
3 債務者の責めに帰すべき債務の履行不能によって生ずる損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時からその進行を開始する。
4 債務の不履行に関して債権者に過失があったときでも、債務者から過失相殺する旨の主張がなければ、裁判所は、損害賠償の責任及びその額を定めるに当たり、債権者の過失を考慮することはできない。
【解答及び解説】
【問 6】 正解 3
1 誤り。債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とするものであり、この通常生ずべき損害については、契約締結当時、両当事者がその損害発生を予見していたか否かを問わず、債権者は賠償請求することができる。
*民法416条1項
2 誤り。特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。したがって、契約締結当時、両当事者がその事情を予見していたものでなくても、予見すべきであったときは事情によって生じた損害であれば債権者は賠償請求することができる。
*民法416条2項
3 正しい。債務不履行による損害賠償請求権は、期限の定めのない債務と考えられるので、債権成立のときから、すなわち本来の債務の履行を請求しうる時から消滅時効の進行を開始する。
*民法166条1項1号
4 誤り。債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。つまり、裁判所は債務者からの過失相殺の主張の有無を問わず、債権者の過失を考慮することができる。
*民法418条
【解法のテクニック】この問題は、はっきりいって難しかったと思います。肢1、肢2、肢4は初出題ではなかったかと思います。ただ、正解肢の肢3については、「消滅時効の起算点は、権利を行使しうる時」という基本が分かっていて、何とかなったという人もいるかと思います。意外に(?)出題者というのは優しいところがあって、「いろいろ難しい部分もあるけど、基本が分かっていれば、正解だけは導けますよ。」という問題もあります。本問などはその例かと思います。