下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 平成21年 問45
【問 45】 宅地建物取引業法の規定に基づく監督処分に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 国土交通大臣に宅地建物取引業を営む旨の届出をしている信託業法第3条の免許を受けた信託会社は、宅地建物取引業の業務に関し取引の関係者に損害を与えたときは、指示処分を受けることがある。
2 甲県知事は、宅地建物取引業者A(甲県知事免許)に対して指示処分をしようとするときは、聴聞を行わなければならず、その期日における審理は、公開により行わなければならない。
3 国土交通大臣は、宅地建物取引業者B(乙県知事免許)に対し宅地建物取引業の適正な運営を確保し、又は健全な発達を図るため必要な指導、助言及び勧告をすることができる。
4 丙県知事は、丙県の区域内における宅地建物取引業者C(丁県知事免許)の業務に関し、Cに対して指示処分をした場合、遅滞なく、その旨を丙県の公報により公告しなければならない。
【解答及び解説】
【問 45】 正解 4
1 正しい。宅地建物取引業を営む信託会社については、宅地建物取引業法の免許に関する規定を除き、国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者とみなして宅地建物取引業法が適用される。したがって、宅地建物取引業の業務に関し取引の関係者に損害を与えたときは、指示処分を受けることもあり得る。
【じっくり解説】
この問題の解答に必要な条文は、宅建業法77条2項です。
「宅地建物取引業を営む信託会社については、前項に掲げる規定(免許に関する規定)を除き、国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者とみなしてこの法律の規定を適用する。」
要するに、信託会社は、免許に関する規定を除き、宅地建物取引業法の規定が適用されるということです。免許に関する規定以外の宅地建物取引業法の規定は適用されるので、宅地建物取引業の業務に関し取引の関係者に損害を与えれば、指示処分も受けることがあります、ということで、本問の正解は「正しい」ということになります。
まあ、それだけといってしまえば、それだけですが、ちょっと発展させましょう。先ほどの条文の「免許に関する規定を除き、宅地建物取引業法の規定が適用される」という部分ですが、信託会社は免許に関する規定は適用されないので、宅地建物取引業の免許を受ける必要はありません。つまり、宅地建物取引業の規定を「免許」に関する規定と、「免許以外の」規定に分けて、免許に関する規定は適用されないが、免許に関する規定以外は適用されるということです。ということは、信託会社は、免許を受けることなく宅地建物取引業を行うことができるが(国土交通大臣への届出は必要)、宅地建物取引業を行う際には、通常の宅建業者と同様に、宅建業法のルールは守りなさい、ということです。
そして、監督処分との関係で話をすると、まず、「免許」に関する規定は適用されないので、信託会社は「免許取消処分」を受けることはありません。免許取消処分というのは、免許を受けた宅建業者に対して、その免許を取り上げるということですから、初めから免許を受けていない信託会社から、免許を取り上げることは不可能です。
ただ、免許以外の規定は適用されますから、宅地建物取引業の業務に関し不正な行為があれば、指示処分だけでなく、業務停止処分も受けます。
以上まとめると、信託会社は、
免許に関する規定の適用なし=免許取消処分もなし
免許に関する規定以外の規定は適用=指示処分、業務停止処分はある
ということになります。
*宅地建物取引業法77条2項
2 正しい。国土交通大臣又は都道府県知事は、宅地建物取引業者に対して監督処分をしようとするときは、聴聞を行わなければならず、聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。
*宅地建物取引業法69条
3 正しい。国土交通大臣はすべての宅地建物取引業者に対して、宅地建物取引業の適正な運営を確保し、又は宅地建物取引業の健全な発達を図るため必要な指導、助言及び勧告をすることができる。
*宅地建物取引業法71条
4 誤り。都道府県知事は、宅地建物取引業者に対して業務停止処分や免許取消処分を行ったときは公告が必要であるが、指示処分を行ったにすぎないときは、公告は不要である。
*宅地建物取引業法70条3項
【解法のポイント】肢3と肢4は、過去問での出題は少ないですが、過去に出題はされています。過去問をきっちり勉強していた人は、この問題はできたでしょうね。