下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成20年 問36

【問 36】 宅地建物取引業者Aが建物に係る信託(Aが委託者となるものとする。)の受益権を販売する場合において、宅地建物取引業法第35条の規定に基づいてAが行う重要事項の説明に関する次の行為のうち、宅地建物取引業法の規定に違反しないものの組合せはどれか。

ア Aは、販売の対象が信託の受益権であったので、買主Bに対し、宅地建物取引士でない従業員に説明をさせた。

イ Aは、当該信託の受益権の売買契約を締結する半年前に、買主Cに対して当該契約と同一の内容の契約について書面を交付して説明していたので、今回は説明を省略した。

ウ Aは、買主Dが金融商品取引法第2条第31項に規定する特定投資家であったので、説明を省略した。

エ Aは、当該信託財産である建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関して保証保険契約を締結していたが、買主Eに対しその説明を省略した。

1 ア、イ
2 イ、ウ
3 イ、エ
4 ウ、エ
【解答及び解説】

【問 36】 正解 2

ア 違反する。宅地建物取引業者は、宅地又は建物に係る信託(当該宅地建物取引業者を委託者とするものに限る。)の受益権の売主となる場合における売買の相手方に対して、その者が取得しようとしている信託の受益権に係る信託財産である宅地又は建物に関し、その売買の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、一定の事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。
*宅地建物取引業法35条4項

イ 違反しない。信託の受益権についての重要事項の説明は、信託の受益権の売買契約の締結前1年以内に売買の相手方に対し当該契約と同一の内容の契約について書面を交付して説明をしている場合には、重要事項の説明は不要となる例外がある。
*宅地建物取引業法施行規則16条の4の4第1項2号

ウ 違反しない。信託の受益権についての重要事項の説明は、金融商品取引法第2条第31項に規定する特定投資家を信託の受益権の売買の相手方とする場合には、重要事項の説明は不要となる例外がある。
*宅地建物取引業法施行規則16条の4の4第1項1号

エ 違反する。信託の受益権についての重要事項の説明の対象として、当該信託財産である宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結が講じられているときは、その概要を説明しなければならない。
*宅地建物取引業法施行規則16条の4の7第6号


【解法のテクニック】今年の宅建業法の問題は、難しいというのか、今まで問われていなかった細かい問題やポピュラーでない論点の出題が多かっただけでなく、それが個数問題や、選択肢の組み合わせを問う形式で問われていて、シビれてしまった人も多かったのではないかと思います。この信託受益権の重要事項の説明の問題にしても、対策をあまり取っていなかった人もいるのではないでしょうか。そうはいっても試験の現場で、「それは勉強していない」とも解答用紙に書けないので、どうせ択一式の問題ですから、答えは一応出せますので、チャレンジするしかありません。ただ、こういう問題に時間をかけるのは、愚の骨頂だと思います。知らない問題は、いくら時間をかけて考えても正解に近付くということはありません。むしろ、第一印象の方が正解であることの方が多いものです。したがって、自分の今まで勉強してきた知識を動員して、スパッと答えを一つ決めて、後は振り返らないことが重要です。ということで、この問題を解答する過程をシュミレーションしてみます。まず、このような選択肢の組み合わせを選ぶ問題は、自信のあるものから、選択肢を「切っていく」というやり方が一番正解を導きやすくなります。肢1~肢4まで全部知らないという場合でも、常識でこれは間違いないだろうというものから「切っていきます」。具体的には、この自信のある肢というのは、人によって異なるでしょうが、肢アについては、重要事項の説明ということである以上、宅地建物取引士が説明しないといけないというくらいは分かると思います。普通の重要事項の説明でも資格を持った宅地建物取引士でないと説明できないのに、信託受益権というヤヤこしいものについて、従業員でいいということにはならないと思います。そこで、肢アは「違反する」ということで、選択肢1は「ア」を含んでいるので、答えではない。これくらいはできるでしょう。問題は、選択肢2~4のうちのどれが解答かということですが、これはなかなか難しかったと思います。肢イについてですが、これは再度説明しないといけないと考えた人もいるかと思います。しかし、信託の受益権の場合、たとえば通常の土地の分譲で一つの土地を売った後、隣の土地を説明するのとはわけが違います。受益権という、権利を複数に割って同一の商品として売る場合は、同じ説明になります。前に購入した土地の隣の土地という場合には、土地には個性がありますから、隣の土地でも接道の条件等が異なってきます。しかし、受益権というのは、誤解を恐れず、たとえて言うならば株式のようなもので、条件が違うというようなことはありません。したがって、「違反するおそれは少ないのかな?」という感じで見ておきます。肢ウについてですが、相手は特定投資家で、プロなんではないの?という推測はつきます。したがって、「違反の度合いは少ないのかな?」という感じで保留。肢エについてですが、「瑕疵を担保すべき責任の履行」については、通常の重要事項の説明でも説明の対象です。信託受益権を購入する人は、権利を購入するのかもしれませんが、権利の対象である土地の瑕疵担保責任については、重大な関心があるはずです。これは「違反」くさい。肢イ・ウ・エの比較で行くと、肢エが一番違反くさい。最後は度胸です。自分を信じて、選択肢2でエイヤで思い切ってマークを付ける。まあ、なかなかこううまくいかないかもしれませんが、知らない問題が出たときの対処の方法として参考にして下さい。