宅建 過去問解説 平成18年 問14
【じっくり解説】
そんなにややこしい事例ではないので、大丈夫だと思います。
C:土地賃貸人→B:土地賃借人かつ建物賃貸人→A:建物賃借人、ということですね。
ここで問題になるのは、B→Aが、建物の「譲渡」か「賃貸」かという点で、ここがキモになります。
結論から言うと、判例(大判昭和8年12月11日)は、終始一貫、借地上の建物の「譲渡」は、借地権の譲渡又は賃借物の転貸にあたり、地主Cの承諾が必要となるが、借地上の建物の「賃貸」は、借地権の譲渡又は賃借物の転貸に該当せず、地主の承諾は不要となる、としています。
それでは、借地上の建物の「譲渡」でも「賃貸」でも、Aは「土地」を利用するにもかかわらず、なぜこのような違いが生じるのかです。
まず、借地上の建物の「譲渡」ですが、もし借地上の建物の譲渡が賃借権の譲渡・転貸にあたらないとすると、建物の譲受人Aは、建物の所有権は取得するが、借地権はないことになりますが、これでは法律的にはAは建物すら所有することはできません。建物というのは、空中に浮いているわけではありませんので、建物を所有したければ、必ず「土地の利用権」が必要です。この「土地の利用権」は、通常は土地の所有権ということでしょうが、別に地上権や賃借権のような権利でもかまいません。したがって、建物の譲受人Aは、建物を買い受けたのであれば、本問でいえば土地の利用権である賃借権についても、譲渡又は転貸を受けたとことになります。したがって、借地上の建物の譲渡は、必ず賃借権等の譲渡・転貸を伴います。
これに対して、借地上の建物の賃貸は、必ずしもそうなりません。借地上の建物を賃貸しても、建物の所有権は借地人Bのままであり、借地人Bについていえば、建物の所有権+借地権という土地の利用権がありますので、何の問題もありません。確かに、建物を賃貸すると、現実的には建物の賃借人が土地を利用することになりますが、もともと「借地権」というのは、建物所有目的で土地を借りることですから、建物所有のために土地を利用することは、地主は最初から分かっていることで、借地人B自身が建物に居住しようが、建物を賃貸して第三者に居住させようが、その程度のことは地主としては覚悟しているはずで、土地の賃貸人と賃借人の信頼関係を破壊するようなことではないといえます。
最近は、宅建試験でも、「判決文によれば」という問題が毎年1問出題されますので、判例の表現で見てみると、「建物所有を目的とする土地賃貸借契約においては、借地人は一般に、借地上に自己が所有する建物を他に賃貸することは建物所有権に基づいて自由になし得るところであって、借地人が借地上の自己所有建物を土地の賃貸人の承諾を得ないで第三者に賃貸して使用させたとしても、その故をもって借地の無断譲渡転貸として土地の賃貸人が土地賃貸借契約を解除することはできないと解される。」ということになります。
ということで、借地上の建物の「譲渡」は、借地権の譲渡・転貸にあたるが、借地上の建物の「賃貸」は、借地権の譲渡・転貸にあたらないということになります。したがって、本日の問題の正解は「○」ということになります。