下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成18年 問14

【問 14】 AはBとの間で、平成16年4月に、BがCから借りている土地上のB所有の建物について賃貸借契約(期間2年)を締結し引渡しを受け、債務不履行をすることなく占有使用を継続している。この場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Bが、Cの承諾を得ることなくAに対して借地上の建物を賃貸し、それに伴い敷地であるその借地の利用を許容している場合でも、Cとの関係において、借地の無断転貸借とはならない。

2 借地権の期間満了に伴い、Bが建物買取請求権を適法に行使した場合、Aは、建物の賃貸借契約を建物の新たな所有者Cに対抗できる。

3 平成18年3月に、借地権がBの債務不履行により解除され、Aが建物を退去し土地を明け渡さなければならなくなったときは、Aが解除されることをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、Aの請求により、Aがそれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。

4 平成18年3月に、借地権が存続期間の満了により終了し、Aが建物を退去し土地を明け渡さなければならなくなったときは、Aが借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、Aの請求により、Aがそれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。

【解答及び解説】

【問 14】 正解 3

1 正しい。借地上の建物の賃貸は、借地権の譲渡又は土地の転貸に当たらない。

【じっくり解説】

そんなにややこしい事例ではないので、大丈夫だと思います。

C:土地賃貸人→B:土地賃借人かつ建物賃貸人→A:建物賃借人、ということですね。

ここで問題になるのは、B→Aが、建物の「譲渡」か「賃貸」かという点で、ここがキモになります。

結論から言うと、判例(大判昭和8年12月11日)は、終始一貫、借地上の建物の「譲渡」は、借地権の譲渡又は賃借物の転貸にあたり、地主Cの承諾が必要となるが、借地上の建物の「賃貸」は、借地権の譲渡又は賃借物の転貸に該当せず、地主の承諾は不要となる、としています。

それでは、借地上の建物の「譲渡」でも「賃貸」でも、Aは「土地」を利用するにもかかわらず、なぜこのような違いが生じるのかです。

まず、借地上の建物の「譲渡」ですが、もし借地上の建物の譲渡が賃借権の譲渡・転貸にあたらないとすると、建物の譲受人Aは、建物の所有権は取得するが、借地権はないことになりますが、これでは法律的にはAは建物すら所有することはできません。建物というのは、空中に浮いているわけではありませんので、建物を所有したければ、必ず「土地の利用権」が必要です。この「土地の利用権」は、通常は土地の所有権ということでしょうが、別に地上権や賃借権のような権利でもかまいません。したがって、建物の譲受人Aは、建物を買い受けたのであれば、本問でいえば土地の利用権である賃借権についても、譲渡又は転貸を受けたとことになります。したがって、借地上の建物の譲渡は、必ず賃借権等の譲渡・転貸を伴います。

これに対して、借地上の建物の賃貸は、必ずしもそうなりません。借地上の建物を賃貸しても、建物の所有権は借地人Bのままであり、借地人Bについていえば、建物の所有権+借地権という土地の利用権がありますので、何の問題もありません。確かに、建物を賃貸すると、現実的には建物の賃借人が土地を利用することになりますが、もともと「借地権」というのは、建物所有目的で土地を借りることですから、建物所有のために土地を利用することは、地主は最初から分かっていることで、借地人B自身が建物に居住しようが、建物を賃貸して第三者に居住させようが、その程度のことは地主としては覚悟しているはずで、土地の賃貸人と賃借人の信頼関係を破壊するようなことではないといえます。

最近は、宅建試験でも、「判決文によれば」という問題が毎年1問出題されますので、判例の表現で見てみると、「建物所有を目的とする土地賃貸借契約においては、借地人は一般に、借地上に自己が所有する建物を他に賃貸することは建物所有権に基づいて自由になし得るところであって、借地人が借地上の自己所有建物を土地の賃貸人の承諾を得ないで第三者に賃貸して使用させたとしても、その故をもって借地の無断譲渡転貸として土地の賃貸人が土地賃貸借契約を解除することはできないと解される。」ということになります。

ということで、借地上の建物の「譲渡」は、借地権の譲渡・転貸にあたるが、借地上の建物の「賃貸」は、借地権の譲渡・転貸にあたらないということになります。したがって、本日の問題の正解は「○」ということになります。

2 正しい。Bが建物買取請求権を適法に行使した場合、BからCへの建物の売買契約がなされたのと同じになる。したがって、Aは建物の引渡しを受けており、対抗要件を備えているので、新しい所有者であるCに対して建物の賃貸借契約を対抗することができる。
*借地借家法31条1項

3 誤り。借地上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。借地権が借地人の債務不履行によって終了する場合には、この規定は適用されない。
*借地借家法35条1項

4 正しい。肢3の解説参照
*借地借家法35条1項


【解法のポイント】肢1は、借地上の建物の「譲渡」は借地権の譲渡又は土地の転貸になるが、借地上の建物の「賃貸」は借地権の譲渡又は土地の転貸に当たらない。これは混乱しやすいので要注意。肢2の法律構成は、基本形のちょっとした応用ですので、押さえておいて下さい。肢3と肢4は比較の形で出題されているので、気が付きやすいと思います。