下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成18年 問10

【問 10】 AがB所有の建物について賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 AがBの承諾なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することはできない。

2 AがBの承諾を受けてDに対して当該建物を転貸している場合には、AB間の賃貸借契約がAの債務不履行を理由に解除され、BがDに対して目的物の返還を請求しても、AD間の転貸借契約は原則として終了しない。

3 AがEに対して賃借権の譲渡を行う場合のBの承諾は、Aに対するものでも、Eに対するものでも有効である。

4 AがBの承諾なく当該建物をFに転貸し、無断転貸を理由にFがBから明渡請求を受けた場合には、Fは明渡請求以後のAに対する賃料の全部又は一部の支払を拒むことができる。

【解答及び解説】

【問 10】 正解 2

1 正しい。賃借人が、賃貸人の承諾を得ずに、賃借物を転貸すれば、賃貸人は、賃貸借契約の解除をすることができるのが原則である。しかし、判例は、賃貸借契約は、当事者の信頼関係を基礎として成り立っているということを理由に、無断転貸があったとしても、無断転貸が当事者の信頼関係を破壊するような背信的行為と認めるに足りない特段の事情があれば、賃貸人は契約を解除することができないとしている。
*民法612条

2 誤り。転貸借は、AB間の原賃貸借を基礎として成立しているものであるから、原賃貸借が終了した場合は、転貸借も終了するのが原則である。したがって、本肢でもAの債務不履行を理由に原賃貸借が解除された場合は、転貸借も終了する。原賃貸借が合意解除で終了した場合には、原賃貸借の終了を転借人に対抗できないことと混同しないように注意する必要がある。

3 正しい。賃借権の譲渡の承諾は、賃借人に対して行っても、賃借権の譲受人に対して行ってもよい。
*民法612条1項

4 正しい。賃貸人が、無断転貸を理由に転借人に明渡請求をしている以上、転借人はその危険の限度に応じて、賃料の全部又は一部の支払を拒むことができる。


【解法のポイント】肢3と肢4はちょっと考えてしまうかもしれませんが、肢2は絶対に知っておくべき知識です。解説にも書いてあるように、原賃貸借が合意解除の場合と債務不履行解除の場合の違いは気を付けなければなりません。