下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成18年 問7

【問 7】 A銀行のB社に対する貸付債権につき、Cは、B社の委託を受けその全額につき連帯保証するとともに、物上保証人として自己の所有する土地に担保設定している。DもB社の委託を受け全額につき連帯保証している。保証人各自の負担部分は平等である。A銀行とB、C及びDとの間にその他特段の約定はない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Cが、A銀行に対して債権全額につき保証債務を履行した場合、その全額につきB社に対する求償権を取得する。

2 Cが、A銀行に対して債権全額につき保証債務を履行した場合、その半額につきDに対する求償権を取得する。

3 Cが、担保物の処分代金により、A銀行に対して債権の3分の2につき物上保証に基づく弁済をした場合、Cが取得するB社に対する求償権は、A銀行のB社に対する貸付債権に劣後する。

4 Dが、Aに対して債権全額につき保証債務を履行した場合、Cの物上保証の担保物件の価額相当額につきCに対する求償権を取得する。

【解答及び解説】

【問 7】 正解 4

1 正しい。保証人が、主たる債務者に代わって弁済をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対してその全額について求償権を有する。
*民法459条

2 正しい。共同保証人間において、その一人が弁済をした場合、他の保証人に対してその負担部分について求償権を有する。

【じっくり解説】

登場人物は、
A:債権者
B:主たる債務者
C:連帯保証人(かつ物上保証人)
D:連帯保証人

これで、全額を弁済したCからDへ半額の求償ができるか?という問題です。これについては、民法465条1項に本問そのままの規定があります。原文は条文の準用などがあってややこしいので、必要に応じて私が書き直しています。

「連帯債務者間の求償権の規定は、数人の保証人がある場合において、各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。」

ここで「各保証人が全額を弁済すべき旨の特約」というのは、典型的には本条の連帯保証のような場合です。したがって、連帯保証人Cは、全額を弁済した場合は、他の連帯保証人Dに対して半額の求償をすることができます。したがって、本問の正解は「正しい」ということになります。

共同保証人の一人が債権者に対してその全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときは、主債務者に対して求償できることは当然です。それだけではなく、先ほどの条文は他の共同保証人に対しても求償できる旨を定めているんですが、これは主債務者に求償に応じる資力がない場合には、共同保証人間に不公平が生じるのを防ぐためです。そもそも、複数の連帯保証人がある場合、各連帯保証人の負担部分は特約がなければ平等と解されていますが、この場合、全額の支払義務があって、負担部分があるという状況は、連帯債務者の一人が弁済した場合と同じなので、民法442条等を準用し、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときには、他の共同保証人に対して各自の負担部分について求償権を有することにしました。なお、この場合に、求償に応じた共同保証人は、さらに主債務者に対して求償できます。

*民法465条

3 正しい。Cは担保物の処分代金により、債権の3分の2についてはA銀行に弁済しているが、3分の1については弁済していない。したがって、このA銀行がBに対して有している残りの3分の1の債権については、Cは物上保証人として依然Aに対して債務を負っており、その意味でCが有するB社に対する求償権は、銀行のB社に対する貸付債権に劣後する。

【じっくり解説】

この問題は、かなり難問だったと思いますが、資料的な観点から解説してみましょう。まず、事例は、かなりややこしい感じの事例ですが、読みやすいようにまとめましょう。

A=債権者
B=債務者
C=連帯保証、かつ、物上保証人
D=連帯保証人

それを前提に問題を見ますと、物上保証人Cが債務の2/3の弁済をしたというわけです。しかし、全額の弁済をしたわけではないので、本来の債権者Aは1/3の債権を債務者Bに有しているとともに、代位して弁済したCも債権の2/3についてBに対して求償権を有しています。このAの債権と、Cの求償権の関係をどう考えるのか、ということです。

実は、このような一部弁済による代位については民法に条文があります。民法502条1項です。

「債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する。」

この条文の「代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する」というのが非常に簡単な文章なので、具体的にどのようになるのかについて問題が生じます。

この場合、保証人は一部「代位」できるわけですが、「代位」というのは債権者に代わるということですから、抵当権のような担保権の実行なども可能となります。しかし、「一部」の代位ですから、抵当権などの実行は債権者と共同しなければできないのか(共同行使説)、代位者が単独で実行することができるのか(単独行使説)が問題になります。

次に、抵当権が実行された場合の配当について、まず債権者が優先するのか(債権者優先説)、債権者の残債権額と保証人の弁済額を按分して配当を受けることができるのか(按分比例説)、が問題となります。

ただ、宅建試験では、それほど突っ込んで勉強する必要はないでしょう。結論として、「要するに債権者が優先する」というのを覚えておいて下さい。判例も、抵当権実行による配当については債権者が優先することを認めています(最判昭60.5.23)。というのは、債権者より「代位」者が優先するというのでは、代位弁済制度の趣旨を逸脱するからです。したがって、本問は「正しい」ということになります。

*民法502条1項
4 誤り。保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。したがって、DがAに対して全額弁済したとしても、DはCに対して、弁済額の全額を求償することはできず、半額しか求償することはできない。
*民法501条3項4号


【解法のポイント】この問題は、肢3と肢4は非常に難しかったと思います。肢4が正解肢なので、この問題は全体として非常に難易度が高い問題だったと思います。まあ、間違えても仕方ないかなと思います。