下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成18年 問1

【問 1】 次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 契約締結交渉中の一方の当事者が契約交渉を打ち切ったとしても、契約締結に至っていない契約準備段階である以上、損害賠償責任が発生することはない。

2 民法第1条第2項が規定する信義誠実の原則は、契約解釈の際の基準であり、信義誠実の原則に反しても、権利の行使や義務の履行そのものは制約を受けない。

3 時効は、一定時間の経過という客観的事実によって発生するので、消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。

4 所有権に基づく妨害排除請求が権利の濫用となる場合には、妨害排除請求が認められることはない。

【解答及び解説】

【問 1】 正解 4

1 誤り。契約が効力を発生するのは、契約が締結されたときであるのが原則である。しかし、契約締結に至らなくても、当事者間に契約締結に至る交渉がなされ、十分にそれが成熟するに至ったときは、たとえ契約締結に至らなくても、その契約交渉を打ち切った当事者は、相手方に対して損害賠償請求を負うことがある(判例)。

2 誤り。信義誠実の原則は、契約解釈の際の基準であるという点は正しい。しかし、それだけではなく、信義誠実の原則に反する場合は、権利の行使や義務の履行そのものに制約を受けることがある。
*民法1条2項

3 誤り。時効が一定期間の経過という客観的事実によって発生するという点は正しい。しかし、時効の援用により当事者は、権利の消滅という利益を受けることができ、それが権利の濫用となることがある。
*民法145条

4 正しい。所有権に基づく妨害排除請求が権利の濫用となる場合は、権利の行使自体を行うことができないので、妨害排除請求が認められることはない。
*民法1条3項


【解法のテクニック】本問は、一般の宅建の教科書には記載されていない事項ではないかと思います。ただ、落ち着いて常識的に考えれば、自信はなくてもなんとか正解には辿り着けると思います。出題者もそのように考えて出題したと思います。肢4は、ごくごく普通に考えると、妨害排除請求が権利の濫用になるわけですから、妨害排除請求できない、となると思いますよ。まあ、「落ち着く」というのが一番難しいかもしれませんが…