下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成17年 問1

【問 1】 自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。

2 買主Cが意思無能力者であった場合、Cは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。

3 買主である団体Dが法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意の団体であった場合、DがAとの間で売買契約を締結しても、当該土地の所有権はDに帰属しない。

4 買主Eが婚姻している未成年者であり、当該婚姻がEの父母の一方の同意を得られないままになされたものである場合には、Eは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる。

【解答及び解説】

【問 1】 正解 3

1 誤り。被保佐人が不動産の売買契約を行うには、保佐人の同意が必要であり、保佐人の同意なく単独で売買契約を行った場合には、その売買契約は取り消すことができる。無効になるのではない。
*民法13条4項

2 誤り。意思無能力者の行った行為は取り消すまでもなく、無効である。

3 正しい。団体Dは、法律の規定に基づかずに成立にした団体であり、権利能力なき社団と認められる場合も、認められない場合もありうるが、いずれにしろ権利能力がない以上、団体自体に土地の所有権が帰属することはない。

4 誤り。未成年者が婚姻するには父母の同意が必要である。ただし、父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。したがって、この婚姻は有効に成立しており、未成年者は婚姻すれば成年者に達したものとみなされるので、当該売買契約は有効に成立しており、取り消すことはできない。

【じっくり解説】

この問題は、難しい問題だったので、分からなくてもいいといえば、分からなくてもいい問題でしょう。ただ、全く分からないのは気持ちが悪いという人もいるでしょうから、一応解説したいと思います。

まず、未成年者の婚姻については、民法737条という条文があります。

(未成年者の婚姻についての父母の同意)
第737条 未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
2 父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。

この条文は、未成年者の配偶者の選択についての判断能力を補う意味で、未成年者の婚姻については、基本的に父母双方の同意を要件としています(第1項)。

しかし、常に父母の双方の同意が必要だとすれば、未成年者の婚姻の機会を狭めてしまうということで、父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りるとされています(第2項)。

したがって、父母の一方の同意だけで婚姻できますから、20歳未満でも婚姻しているということで、売買契約の取消はできないというのが、本問です。以上より、この問題は「誤り」ということになります。

*民法737条、753条


【解法のポイント】この問題は、肢3か肢4で迷った人がいたかと思います。肢3は初出題だと思いますし、肢4の婚姻についての父母の同意までは、勉強していなかったでしょう。こういう問題は、肢3か肢4に絞り込めたところでよしとせざるを得ないでしょう。