宅建 過去問解説 平成16年 問33
【じっくり解説】
この問題は、あっさり「×」とした人が多かったのではないかと思います。宅地建物取引士資格登録簿には、「宅地建物取引業者の業務に従事する者にあっては、当該宅地建物取引業者の商号又は名称及び免許証番号」を登録しなければならないことになっていますが、Bが勤務しているA社は免許換えはしていますが、BがA社の勤務であるこに変わりはありません。したがって、「業務に従事する宅地建物取引業者に変更なし」→「変更の登録なし」という流れで、「×」ということですね。
ここに落とし穴があります。宅地建物取引士登録簿の記載事項を正確にもう一度見て下さい。「宅地建物取引業者の業務に従事する者にあっては、当該宅地建物取引業者の商号又は名称及び免許証番号」です。最後に「当該宅地建物取引業者の商号又は名称」だけでなく、「免許証番号」というのがあります。
この「免許証番号」というのは、具体的には、
「大阪府知事免許(3)第12345号」
というような形になります。
つまり、免許証番号には、免許権者も書かれるわけですね。したがって、免許換え=免許証番号の変更になるわけです。ということで、本問ではA社は免許換えを行っているので、A社に勤務している宅地建物取引士Bは、宅地建物取引士登録簿の変更の登録を申請する必要があるので、「正しい」ということになります。
【じっくり解説】
この問題は、専任の宅地建物取引士は、契約の締結等を予定している案内所では、「一人」おけばよい、という程度の知識しかない人は、「???」ということだと思います。この問題は、そこをもっと突っ込んでいます。しかし、今から説明する程度の知識は現在の宅建試験では必要です。そして、この問題は意外に広がりを持っているので、しっかりと理解しておけば、簡単ですし、他にも応用がききます。
ということで「じっくり」解説しますと、まず、自ら売主のD社と代理業者のA社のどちらが案内所に専任の宅地建物取引士を設置しなければならないか?です。結論から言うと、この問題では、D社とA社の両方に専任の宅地建物取引士の設置義務があります。
なぜかという、案内所に専任の宅地建物取引士を設置する義務は、案内所を「設置した業者」にあるからです。そんなこと、条文のどこに書いてあるんだ?ということですが、それは専任の宅地建物取引士の設置義務のある場所として、案内所が挙げられていますが、その際、「案内所を設置して行う場合にあっては、その案内所」という表現になっているということだと思います(宅建業法施行規則6条の2第2号・3号)。分譲業者(自ら売主のこと)であれ、代理・媒介業者であれ、案内所を「設置」するのであれば、その案内所に専任の宅地建物取引士を置け!という条文になっているということですね。したがって、案内所の「設置」業者に専任の宅地建物取引士の設置義務があるということになります。
そこで、問題文を見てみると、「A社とD社が共同で設置する案内所」となっていますので、A社もD社も案内所の設置業者であり、両者ともに専任の宅地建物取引士の設置義務があります。
ところで、案内所には、業務に従事する者の数に関係なく、専任の宅地建物取引士は「一人」置けばよいことになっています。それでは、A社とD社の両方に専任の宅地建物取引士の設置義務があるのであれば、A社から一人、D社から一人、合計二人の専任の宅地建物取引士を本問の案内所に置かなければならないのか?というのが次に問題になります。これには、実は「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」という通達などを整理したものがあって、そこに、「複数の宅地建物取引業者が設置する案内所について」という部分があり、ズバリ答えが記載されています。
「同一の物件について、売主である宅地建物取引業者及び媒介又は代理を行う宅地建物取引業者が同一の場所において業務を行う場合には、『いずれかの』宅地建物取引業者が専任の宅地建物取引士を1人以上置けば法第15条第1項の要件を満たすものとする。」
つまり、A社とD社の両方に専任の宅地建物取引士の設置義務があるが、どちらか一方が設置すれば、他方も設置義務を満たしているということになります。A社とD社が譲り合って、一人も設置しなければ、両方とも宅建業法違反ということになるわけです。ということで、本問を見てみましょう。
A社の宅地建物取引士は、専任の宅地建物取引士であるBのみであるとしても、D社が案内所に専任の宅地建物取引士を一人設置すれば、A社は何もしなくても、専任の宅地建物取引士の設置義務を満たすことができるので、本問の案内所で「マンション分譲の代理に係る業務を、A社とD社が共同で設置する案内所で行うこと」はできます。したがって、本問は「誤り」ということになります。
最後に、この問題は他にも応用がきくということを書きましたが、その点について触れましょう。実は、案内所を「設置」した業者が、「義務」を負うというのは、この専任の宅地建物取引士の設置義務だけではありません。標識の掲示義務も、業務を行う場所(案内所等)の届出も、実は案内所を設置した業者のみに義務付けられます。