下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成16年 問11

【問 11】 AはBと、それぞれ1,000万円ずつ出資して、共同で事業を営むことを目的として民法上の組合契約を締結した。この場合、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 AとBは、出資の価額が均等なので、損益分配の割合も均等に定めなければならない。

2 組合への出資金で不動産を購入し組合財産とした場合、この組合財産は総組合員の共有に属する。

3 組合財産たる建物の賃借人は、組合に対する賃料支払債務と、組合員たるAに対する債権とを相殺することができる。

4 組合に対し貸付金債権を取得した債権者は、組合財産につき権利行使できるが、組合員個人の財産に対しては権利行使できない。

【解答及び解説】

【問 11】 正解 2

1 誤り。当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は各組合員の出資の価額に応じてこれを定める。したがって、当事者が特別の定めにより、出資の価額の割合によらずに損益分配の割合を定めることもできる。

【じっくり解説】

本問に関連しそうな民法の規定は、第674条の「組合員の損益分配の割合」です。

第1項 当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は、各組合員の出資の価額に応じて定める。
第2項 利益又は損失についてのみ分配の割合を定めたときは、その割合は、利益及び損失に共通であるものと推定する。

これは、上記の条文を見てもらえば分かりますように、「当事者が損益分配の割合を定めなかったとき」や「利益又は損失についてのみ分配の割合を定めたとき」の規定であり、それ以外の定めをすることもでき、組合契約において損益分配の割合の定めがあれば、それに従います。

したがって、出資の価額が均等だからといって、損益分配の割合も均等に定めなければならないというわけではなく、本問は「誤り」ということになります。

宅建試験では、ここまででいいでしょう。後は雑談的に読んでもらえば結構です。

それでは、当事者が定めればどのような損益分配の割合の定めでもいいかというと、認められないものもあります。特定の組合員だけが利益を取得して、他の組合員が損失だけを負担するような定め(このような組合を「獅子組合」といいます。)は無効とされます。

このような特別の定め以外なら認められるので、本問は「誤り」ということです。

なお、判例は、特定の組合員が損失を全く負担せず、利益の一部を取得する定めは、この組合員の労務が貴重で、その者を加入させることが相当である場合には有効にしています。

*民法674条1項

2 正しい。組合契約は、特定の共同事業を営む目的をもつ団体を結成する双務契約であり、各組合員の出資その他の組合財産は総組合員の共有に属する。

【じっくり解説】

この問題は、民法の条文(第668条)そのままです。「各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。」ということで、本日の解答は「正しい」ということになります。

もうそれだけで、宅建試験では十分ですが、民法の共有の復習も兼ねて、組合における共有について若干触れておきましょう。

組合財産の共有は、通常のいわゆる「共有」(われわれが所有権のところで勉強する内容)とは異なる点があります。

たとえば、共有物については、保存行為は単独でできますが、それ以外の管理行為などは、持分の過半数で行うことになりますが、組合においては、「常務」(日常的に行われる通常の業務)については、各組合員が単独で行うことができます(670条)。

また、共有持分は各共有者が他の共有者の同意を得ずに単独で譲渡できますが、組合員は、組合財産についてその持分を処分できません(676条1項)。

さらに、各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができますが、組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができません(676条2項)。

ということで、組合財産の共有というのは、通常の共有とは性質を異にしますが、本問では条文そのままの文章なので「正しい」ということになります。

*民法668条

3 誤り。組合は法人格を有しないが、組合財産は、特定の共同事業を営むという目的を持つものであり、組合員の個人財産とは区別されるべきである。したがって、組合員の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができないとされている。そして、組合の債務者は、その債務と組合員に対する債権とを相殺することができない。なぜならば、このような相殺を認めることは、組合の事業に利用すべき財産(本問では、組合の賃料債権)を、組合員の1人のために使用することになるからである。
*民法677条
4 誤り。組合の債権者は、「組合財産」についてその権利を行使することができる。また、組合の債権者は、その選択に従い、「各組合員」に対して損失分担の割合又は等しい割合でその権利を行使することができる。
*民法675条


【解法のテクニック】この問題は、もうシビレてしまった人が多かったと思います。宅建試験でかつて組合のことが聞かれたこともあるんですが、ここまで細かい出題は初めてです。こういう場合は、ある程度自分で問題文を読んだ感じで、第一印象で答えを決めて、あまり時間を使わないことです。知らない問題は、時間をかけたからと言って、正解に近付くわけではありませんので、時間の配分を間違えないこと。