宅建 過去問解説 平成16年 問11
【じっくり解説】
本問に関連しそうな民法の規定は、第674条の「組合員の損益分配の割合」です。
第1項 当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は、各組合員の出資の価額に応じて定める。
第2項 利益又は損失についてのみ分配の割合を定めたときは、その割合は、利益及び損失に共通であるものと推定する。
これは、上記の条文を見てもらえば分かりますように、「当事者が損益分配の割合を定めなかったとき」や「利益又は損失についてのみ分配の割合を定めたとき」の規定であり、それ以外の定めをすることもでき、組合契約において損益分配の割合の定めがあれば、それに従います。
したがって、出資の価額が均等だからといって、損益分配の割合も均等に定めなければならないというわけではなく、本問は「誤り」ということになります。
宅建試験では、ここまででいいでしょう。後は雑談的に読んでもらえば結構です。
それでは、当事者が定めればどのような損益分配の割合の定めでもいいかというと、認められないものもあります。特定の組合員だけが利益を取得して、他の組合員が損失だけを負担するような定め(このような組合を「獅子組合」といいます。)は無効とされます。
このような特別の定め以外なら認められるので、本問は「誤り」ということです。
なお、判例は、特定の組合員が損失を全く負担せず、利益の一部を取得する定めは、この組合員の労務が貴重で、その者を加入させることが相当である場合には有効にしています。
【じっくり解説】
この問題は、民法の条文(第668条)そのままです。「各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。」ということで、本日の解答は「正しい」ということになります。
もうそれだけで、宅建試験では十分ですが、民法の共有の復習も兼ねて、組合における共有について若干触れておきましょう。
組合財産の共有は、通常のいわゆる「共有」(われわれが所有権のところで勉強する内容)とは異なる点があります。
たとえば、共有物については、保存行為は単独でできますが、それ以外の管理行為などは、持分の過半数で行うことになりますが、組合においては、「常務」(日常的に行われる通常の業務)については、各組合員が単独で行うことができます(670条)。
また、共有持分は各共有者が他の共有者の同意を得ずに単独で譲渡できますが、組合員は、組合財産についてその持分を処分できません(676条1項)。
さらに、各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができますが、組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができません(676条2項)。
ということで、組合財産の共有というのは、通常の共有とは性質を異にしますが、本問では条文そのままの文章なので「正しい」ということになります。