下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成16年 問3

【問 3】 Aは、自己所有の建物をBに売却したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

1 Cが何らの権原なくこの建物を不法占有している場合、Bは、Cに対し、この建物の所有権を対抗でき、明渡しを請求できる。

2 DがAからこの建物を賃借し、引渡しを受けて適法に占有している場合、Bは、Dに対し、この建物の所有権を対抗でき、賃貸人たる地位を主張できる。

3 この建物がAとEとの持分1/2ずつの共有であり、Aが自己の持分をBに売却した場合、Bは、Eに対し、この建物の持分の取得を対抗できない。

4 Aはこの建物をFから買い受け、FからAに対する所有権移転登記がまだ行われていない場合、Bは、Fに対し、この建物の所有権を対抗できる。

【解答及び解説】

【問 3】 正解 2

1 正しい。不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなければこれを第三者に対抗することができない。この場合の「第三者」は、基本的には当事者及びその一般承継人以外の者を指すが、判例はそれだけではなく「第三者」は「登記がないことを主張する正当な利益を有する者」でなければならないとする。不法占拠者は、正当な利益を有するとはいえず、Bは不法占拠者Cに対して、登記なく建物の所有権を対抗でき、明渡しも請求することができる。
*民法177条

2 誤り。借地借家法31条の規定による賃貸借の対抗要件(引渡し)を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。そして、この賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
*民法605条の2第1項・3項

3 正しい。不動産の共有者の1人が自己の持分を譲渡した場合における譲渡人以外の他の共有者は、民法177条にいう「第三者」に該当するから、右譲渡につき登記が存しないときには、譲受人は、右持分の取得をもって他の共有者に対抗することができない(最判昭46.6.18)。したがって、Bは所有権移転登記を行っていない以上、Eに対して、この建物の持分の取得を対抗できない。

【じっくり解説】

この問題の意味は分かると思います。A・E共有の建物について、Aが自己の持分をBに譲渡します。

共有の復習ですが、共有「持分」は、他の共有者の同意なく譲渡することができます。したがって、Aは自己の持分を、Eの同意なくBに譲渡することができます。

そして、本問ではBは未登記です。そこで、Bは登記なく、Aの持分の取得を、Eに対抗できるのか?というのが本問の趣旨です。

この問題は、典型的な二重譲渡の問題とは異なるように見えます。Aが自己の持分をBとEに二重に譲渡したというわけではないからです。つまり、Aの持分について、EとBは直接相容れない関係にはありません。

そして、民法177条は、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」となっています。

判例は、本問のBはこの民法177条の「第三者」だとしています。つまり、Bは「不動産に関する物権」=所有権を取得しているわけですが、この所有権の取得は登記がないと第三者(E)に対抗できないとしているわけです。

判例(最判昭46.6.18)で問題になった事例では、Eが共有物の分割を行うときに、誰を相手にすればいいのか?AかBかどちらを相手に共有物の分割をするのかが問題になったわけです。そこで、Bに登記がない限り、Aを相手にすべきだ、という判決が出たわけです。Eとしては、登記もないような譲受人Bを相手にするわけにはいかないわけです。

この実は177条の「第三者」(登記がなければ対抗できな第三者)の意味については、いろいろな説明の仕方がありますが、宅建試験の範囲では、上記程度の理解でよいかと思います。

*民法177条

4 正しい。FはBの売主であるAの前所有者であり、F、A、Bはそれぞれ物権変動の当事者の関係に立ち、対抗関係に立たないので、BはFに対して登記なく、その所有権の取得を対抗できる。
*民法177条


【解法のテクニック】この問題は、肢3が意外に考え込んでしまう問題で、初出題になると思います。ただ、肢1、肢2、肢4は答えられなければいけない問題で、その中に正解肢がありますので、知っている肢で勝負して下さい。