下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成14年 問7

【問 7】 AB間の土地売買契約中の履行遅滞の賠償額の予定の条項によって、AがBに対して、損害賠償請求をする場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているのはどれか。

1 賠償請求を受けたBは、自己の履行遅滞について、帰責事由のないことを主張・立証すれば、免責される。

2 Bが、Aの過失を立証して、過失相殺の主張をしたとき、裁判所は損害額の算定にその過失を斟酌することができる。

3 裁判所は、賠償額の予定の合意が、暴利行為として公序良俗違反となる場合でも、賠償額の減額をすることができない。

4 Aは、賠償請求に際して、Bの履行遅滞があったことを主張・立証すれば足り、損害の発生や損害額の主張・立証をする必要はない。

【解答及び解説】

【問 7】 正解 3

1 正しい。債務不履行においては、債務者が自己に帰責事由がないことを主張・立証しなければならず、それに成功すれば免責される。
*民法415条

2 正しい。債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める(過失相殺)。そして、損害賠償額の予定がなされているときでも、債権者に過失があれば、過失相殺がなされる(判例)。
*民法418条

3 誤り。損害賠償額の予定がなされると、裁判所は、その額を増減することができない。しかし、損害賠償額の予定が、暴利行為として公序良俗となる場合は、賠償額の減額をすることができる。
*民法420条1項

4 正しい。本問では、損害賠償額の予定があるので、債権者は債務者の履行遅滞の事実を主張・立証すればよく、その発生や損害額の主張・立証は不要である。
*民法420条1項


【解法のポイント】債務不履行があった場合、裁判ではその額について争いがなることが多い。そういう損害賠償額の争いについて、あらかじめ決めておくのが損害賠償額の予定です。これは、例えば「債務不履行があれば、一律損害賠償額は、500万円としよう。」ということであり、その500万円については、債権者に過失があれば、過失相殺がなされるし(肢2)、損害賠償額の主張・立証は不要です(肢4、その額の争いを避けるために損害賠償額の予定をしたわけですから)。ただ、当事者の合意があるからといっても、暴利行為はダメです(肢3)。