下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成14年 問1

【問 1】 AがBの欺罔行為によって、A所有の建物をCに売却する契約をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Aは、Bが欺罔行為をしたことを、Cが知り、又は知ることができたときでないと、売買契約の取消しをすることができない。

2 AがCに所有権移転登記を済ませ、CがAに代金を完済したとき後、詐欺による有効な取消しがなされたときには、登記の抹消と代金の返還は同時履行の関係になる。

3 Aは、詐欺に気が付いていたが、契約に基づき、異議を留めることなく所有権移転登記手続をし、代金を請求していた場合、詐欺による取消しをすることはできない。

4 Cが当該建物を、詐欺について善意無過失のDに転売して所有権移転登記を済ませても、Aは詐欺による取り消しをして、Dから建物の返還を求めることができる。

【解答及び解説】

【問 1】 正解 4

1 正しい。相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
*民法96条2項

2 正しい。取り消しによる原状回復義務は、相互に同時履行の関係にある(判例)。
*民法533条

3 正しい。追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について全部又は一部の履行、履行の請求などがあったときは、追認をしたものとみなす(法定追認)。
*民法125条1号・2号
※補充解説
この問題文は、分かりにくい文章だと思いますが、問題文には「AがBの欺罔行為によって、A所有の建物をCに売却する契約をした。」と言い切っている以上、Aの売却行為は詐欺に基づく意思表示であるということは前提で考えます。つまり、Aの意思表示は第三者による詐欺です。
第三者による詐欺は、相手方(本問ではC)が善意であれば、そもそも取り消せません。相手方Cが悪意のときだけ取り消せます。
ところが、問題文にはCは善意とも悪意とも書いていない。法律の問題ではこういうことは、たまにあります。したがって、両方の可能性で考える。
Cが善意であれば、そもそも取り消せない。
それでは、Cが悪意の場合はどうか。Cが悪意であれば、基本的には取り消せます。しかし、「Aは、詐欺に気が付いていたが、契約に基づき、異議を留めることなく所有権移転登記手続をし、代金を請求していた場合」はどうか? というのがこの問題です。詐欺だと分かった上で「所有権移転登記手続をし、代金を請求」すれば、それは追認とみなされる(法定追認)になるので取り消せない。したがって、「正しい」となります。Aは悪意で(自分は詐欺されたと知っていて)、代金の請求などをしているので、これは追認とみなす、ということです。
まとめると、以下のようになります。
C=善意 →そもそも取り消せない
C=悪意 →本来取り消せるばずだけど、法定追認で取り消せない

4 誤り。詐欺による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者に対抗することができない。したがって、Aは詐欺による取消しを、善意無過失のDに対抗することができない。
*民法96条3項


【解法のポイント】本問を本試験で初めて見た人は、「欺罔」(ぎもう)という言葉で、ビックリした人もいるようですが、後の問題文を見れば詐欺の問題だと分かったと思うので、問題はないと思います。本試験のときは、落ち着いて問題文をよく読んで対処して下さい。