下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 平成13年 問22
【問 22】 土地区画整理法における土地区画整理事業に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 施行者が、道路法にいう道路の用に供する土地を、道路管理者の了解を得ることなく造成した場合でも、当該道路管理者は、施行者に対して、その造成費用の全部を支払わなければならない。
2 施行者は、仮換地の指定を行うに当たっては、従前の宅地について抵当権を有する者に対して、仮換地について仮にその目的となるべき宅地又はその部分を指定しなければならない。
3 換地処分があった場合、従前の宅地に存した未登記及び未申告の借地権は、その公告があった日が終了した時において消滅し、従前の宅地とみなされる換地について存続することはない。
4 土地区画整理組合が成立した場合において、施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者はすべて組合員となるが、施行地区内の借家人は組合員とはならない。
【解答及び解説】
【問 22】 正解 4
1 誤り。都市計画において定められた幹線街路等の用に供する土地の造成を主たる目的とする土地区画整理事業を施行する場合、施行者は、あらかじめ公共施設管理者と協議し、事業計画を定めておけば、公共施設管理者に対し、一定の範囲内において、その土地区画整理事業に要する費用の全部又は一部を負担することを求めることができる。本肢では、道路管理者の了解を得ていないので、施行者は、造成費用の全部の負担を認めることができない。
*土地区画整理法120条
2 誤り。施行者は、仮換地を指定するに当たって、従前の宅地について地上権、永小作権、賃借権その他の宅地を使用し、又は収益することができる権利を有する者があるときは、その仮換地について仮にそれらの権利の目的となるべき宅地又はその部分を指定しなければならない。抵当権には、使用・収益権はないので、抵当権者に仮換地の指定を行う必要はない。
*土地区画整理法98条1項
3 誤り。個人施行者以外の施行者は、未登記及び未申告の借地権については、これを存しないものとみなして、換地処分等をすることができる。したがって、未登記及び未申告の借地権でも、これを承認して換地処分をすることはできる。
【じっくり解説】
これは「×」で、多くの方ができたのではないかと思います。したがって、本日の内容はそんなに難しい話ではありませんが、この「未登記及び未申告の借地権」というのがみなさんのテキストでもよく出てくると思います。しかも、テキストの中で複数個所出てくるものが多いと思いますが、この「未登記及び未申告の借地権」というのは、前にもテキストの中で出てきたな… なぜ同じ話が何度も出てくるのだろう? と私は昔感じたことがあるので、その辺の話をしたいと思います。ただ、ここは難しく考える必要はないと思います。
土地区画整理法には、「宅地の所有者及び借地権者」の全員だとか、3分の2だとかいう規定がちょくちょく出てきます。たとえば、「定款及び事業計画又は事業基本方針」に関して、宅地の所有者及び借地権者の3分の2以上の同意が必要ですが、その借地権者の中に未登記で申告のない借地権者はカウントしません(法19条4項)。
また、土地区画整理組合が施行する土地区画整理事業に係る施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員とされますが、この組合員にも未登記で申告のない借地権者は含まれません(法25条2項)。そして、本問の換地処分がなされた場合においても、個人施行者以外の施行者は、所有権以外の権利で登記のないものでその申告のないものについては、その申告がない限り、これを存しないものとみなして、換地処分をすることができるとされています。
この「宅地の所有者及び借地権者」には、「未登記及び未申告の借地権者は含みませんよ」ということがその都度個別に規定されているので(まとめて規定されている部分もありますが)、宅建のテキスト等でも同じ話が複数出てくるというだけです。
ちなみに、この「未登記及び未申告の借地権」を除くのは、土地区画整理事業の円滑、迅速、画一的な施行を行うためです。未登記・未申告の借地権が後から続々と出てくると、事業が前に進みませんよね。
なお、本問はそれ以外にもちょっとひっかけがあって、個人施行者以外の施行者は、所有権以外の権利で登記のないものでその申告のないものについては、その申告がない限り、これを存しないものとみなして、換地処分をすることが「できる」とされていますので、未登記及び未申告の借地権でも、これを承認して換地処分をすることはできます。
*土地区画整理法85条5項
4 正しい。組合が施行する土地区画整理事業に係る施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員とする。借家人が組合員となるとする規定はない。
*土地区画整理法25条1項
【解法のポイント】土地区画整理法は難しい問題が出題されることがありますよね。本問もそのような問題だと思います。1年に1問しか出題されないので、あまり「入れ込む」のもどうかと思います。本問では肢2と肢4くらいは押さえておいて下さい。