下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 平成13年 問9
【問 9】 Aは、BからB所有の建物を賃借し、特段の定めをすることなく、敷金として50万円をBに交付した。この場合のAのBに対する敷金返還請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 賃貸借契約期間中でも、Bの返済能力に客観的な不安が生じた場合は、Aは、賃料支払債務と敷金返還請求権とを対当額にて相殺することができる。
2 敷金返還請求権は、賃貸借契約と不可分であり、Aは、Bの承諾があったとしても、これをAの債権者に対して担保提供することができない。
3 賃貸借契約が終了した場合、建物明渡債務と敷金返還債務とは常に同時履行の関係にあり、Aは、敷金の支払と引換えにのみ建物を明け渡すと主張できる。
4 Bは、Aの、賃貸借契約終了時までの未払賃料については、敷金から控除できるが、契約終了後明渡しまでの期間の賃料相当損害額についても、敷金から控除できる。
【解答及び解説】
【問 9】 正解 4
1 誤り。敷金返還請求権は、賃借人の目的物の引渡しによってはじめて発生するものであり、この敷金返還請求権と賃料支払債務を相殺することはできない。
*民法622条の2第1項1号
2 誤り。敷金返還請求権は、賃貸借契約の従たる契約であるが、別個の契約であり、これを担保として提供することはできる。また、敷金返還請求権は建物の明渡しまでは発生しないものであるが、将来発生する債権であっても担保の目的とすることはできる。
3 誤り。敷金返還請求権は、賃借人の目的物の引渡しによってはじめて発生するものであり、建物の明渡しが先履行である。したがって、建物明渡債務と敷金返還債務は同時履行の関係にはない。
*民法622条の2第1項1号
4 正しい。敷金返還請求権は建物明渡し時点までに生じた債務を控除してなお残額がある場合に発生するものである。したがって、未払賃料だけでなく、賃貸借契約終了後明渡しまでに生じた損害金についても、敷金から控除できる。
*民法622条の2第1項1号
【解法のポイント】敷金は、以前はほとんど出題されていませんでしたが、最近はよく出題されます。本問の敷金返還請求権の発生時期に関する、いわゆる「明渡し時説」はしっかり押さえておいて下さい。また、肢2は、抽象的に担保提供できるかを聞いていますが、例えば質権のようなものを例に考えてみればいいと思います。質権は過去の本試験に出題されています。