下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成12年 問32

【問 32】 宅地建物取引士Aが、甲県知事の宅地建物取引士資格登録(以下「登録」という。)及び宅地建物取引士証の交付を受けている場合に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 Aが、甲県知事から宅地建物取引士証の交付を受けた際に付された条件に違反したときは、甲県知事は、Aの登録を消除しなければならない。

2 Aは、宅地建物取引士証の有効期間の更新を受けなかったときは、宅地建物取引士証を甲県知事に返納しなければならず、甲県知事は、Aの登録を消除しなければならない。

3 Aは、その住所を変更したときは、遅滞なく、変更の登録の申請とあわせて、宅地建物取引士証の書換え交付を甲県知事に申請しなければならない。

4 Aが、乙県知事に登録の移転の申請とともに、宅地建物取引士証の交付の申請をした場合における宅地建物取引士証の交付は、Aが現に有する宅地建物取引士証に、新たな登録番号その他必要な記載事項を記入する方法で行わなければならない。

【解答及び解説】

【問 32】 正解 3

1 誤り。宅地建物取引業者の場合は、免許の際に付された条件に違反したときは、免許を取り消されるという規定があるが、宅地建物取引士証の交付の際に条件を付することができるという規定はない。

【じっくり解説】

この問題を単純に「○」としてはいけません。この「条件を付す」というのは、宅地建物取引業の「免許」については宅建業法に規定がありますが、宅地建物取引士の「登録」や「宅地建物取引士証の交付」については規定がありません。規定がないということは、宅地建物取引士の登録や宅地建物取引士証の交付の際には、条件を付することはできないということで、その条件に違反するということもあり得ないので「×」ということになります。

ところで、宅地建物取引業の免許には条件を付けることができますが、その条文は宅建業法3条の2「国土交通大臣又は都道府県知事は、免許(免許の更新を含む。)に条件を付し、及びこれを変更することができる。」というものです。

「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」には、この「条件」の例として「免許の更新に当たって、過去5年間の宅地建物取引の実績がない者に対し、免許直後1年の事業年度における宅地建物取引業の取引の状況に関する報告書を当該事業年度の終了後3月以内に提出すること」等というのが例として挙げられています。

これは、もともと宅地建物取引業の免許を取得するには、特に何かの試験に合格していなければならないとか、実務経験が必要だというような要件はありません。免許の基準(欠格事由)に該当しなければ誰でも宅地建物取引業の免許を取得することができます。これは、宅地建物取引士とは決定的に異なります。

宅地建物取引士は、宅建試験に合格していないとなることはできませんし、宅地建物取引士の登録をする際には実務経験(あるいはそれと同等以上の能力)が必要です。

宅地建物取引士=試験に合格+実務経験等+登録の基準
宅地建物取引業者=免許の基準のみ

ということになるわけです。したがって、宅地建物取引業者というのは、宅地建物取引の経験が全くない人が、いきなり免許を取得するということも可能になります。そして、免許権者には、免許の申請者に宅地建物取引の経験がないということは分かります。というのは、免許申請書の添付書類の中に「宅地建物取引業経歴書」(宅建業法4条2項1号)というのがあるからです。このような場合でも、免許の基準(欠格事由)に該当しない以上、免許権者としては免許を与えざるを得ません。しかし、このような宅地建物取引の経験のない人に免許を与えると、本当に適正な宅地建物取引ができるのか、免許権者としても不安です。そこで、免許に上記の例に挙げたような「条件を付す」ことができることになっているわけです。

ちなみに、この宅地建物取引業の免許の条件に違反した場合は、「任意的」免許取消処分事由です(宅建業法66条2項)。

ここまで読んでいただければ、宅地建物取引士の登録や宅地建物取引士証の交付に「条件を付す」旨の規定がない理由は理解できたと思いますし、宅地建物取引業者と宅地建物取引士の違いについても理解が深まったと思います。

*宅地建物取引業法22条の2

2 誤り。宅地建物取引士は、宅地建物取引士証の有効期間が満了し、更新を受けなかったため宅地建物取引士証が効力を失つたときは、速やかに、宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に返納しなければならない。しかし、宅地建物取引士証の有効期間が満了しても、登録まで消除されるわけではない。
*宅地建物取引業法22条の2第6項

3 正しい。宅地建物取引士の住所は、宅地建物取引士登録簿の記載事項であり、また、宅地建物取引士証の記載事項でもあるから、宅地建物取引士が住所を変更したときは、変更の登録の申請とあわせて、宅地建物取引士証の書換え交付の申請もしなければならない。
*宅地建物取引業法20条、同法施行規則14条の11第1項1号

4 誤り。登録の移転の申請とともに宅地建物取引士証の交付の申請があった場合における宅地建物取引士証の交付は、当該宅地建物取引士が現に有する宅地建物取引士証と引換えに新たな宅地建物取引士証を交付して行うものとする。
*宅地建物取引業法施行規則14条の14


【解法のポイント】宅地建物取引士証に関する基本的な問題です。肢1も、そんなにひっかかりやすい問題ではないと思います。