下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成12年 問11

【問 11】 Aを賃借人、Bを賃貸人としてB所有の土地に建物譲渡特約付借地権を設定する契約(その設定後30年を経過した日に借地上の建物の所有権がAからBに移転する旨の特約が付いているものとする。)を締結した場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 本件契約における建物譲渡の特約は、必ずしも公正証書によって締結する必要はない。

2 Aの借地権は、その設定後30年を経過した日における建物譲渡とともに消滅し、本件契約がABの合意によらずに法定更新されることはない。

3 建物譲渡によりAの借地権が消滅した場合で、Aがその建物に居住しているときは、Aは、直ちに、Bに対して建物を明け渡さなければならず、賃借の継続を請求することはできない。

4 Cが、建物をAから賃借し、Aの借地権消滅後もそこに居住している場合で、Bに対して賃借の継続を請求したときは、一定の場合を除き、BC間に期間の定めのない建物賃貸借がされたものとみなされる。

【解答及び解説】

【問 11】 正解 3

1 正しい。建物譲渡特約付借地権は、特に書面で契約を締結する必要はなく、したがって、公正証書によって締結する必要もない。
*借地借家法24条

2 正しい。建物譲渡特約付借地権は、建物譲渡の特約を付ける代わりに、借地権が更新されることはないとするものであるから、当事者の合意によらずに法定更新されることはない。
*借地借家法24条1項

3 誤り。建物譲渡の特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者又は建物の賃借人で建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につきその借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃貸借がされたものとみなされる。
*借地借家法24条2項

4 正しい。肢3の解説参照。
*借地借家法24条2項


【解法のポイント】建物譲渡特約付借地権にポイントを絞った珍しい問題です。もともと借地契約において、地主は、法定更新の規定が適用されると、一旦土地を貸せば、なかなか戻ってこない。したがって、地主としては借地契約の期間が終了すれば、「すぐに土地を返して欲しい」と考えます。一方、借地人は、借地契約の期間が終了しても、建物が存続している以上、「もっと建物に住みたい」と考えます。この地主の「土地を返して欲しい」という要求と、借地人の「もっと建物に住みたい」という要求の双方を満たそうとするのが、建物譲渡特約付借地権です。すなわち、建物譲渡特約付借地権においては、法定更新の規定が適用されないので、借地契約の期間が満了すれば、確実に借地権は消滅し、地主に土地が戻ってきます。それだけではなく、借地上に建物があれば、借地人から地主への建物の譲渡が認められます。つまり、建物の名義も地主のものになるわけです。しかし、これだけでは借地人は建物から追い出されてしまうので、借地人が請求すれば、期限の定めのない建物賃貸借が成立します。借地人の立場からすれば、当初の借地権の存続期間中は、所有者として建物に居住しているが、存続期間が終了すれば、賃借人として建物に居住することになります。以上、地主に土地は戻ってくるが、借地人も建物に居住する権利は奪われないということになります。