下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成12年 問7

【問 7】 買主Aと売主Bとの間で建物の売買契約を締結し、AはBに手付を交付したが、その手付は解約手付である旨約定した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

1 手付の額が売買代金の額に比べて僅少である場合には、本件約定は、効力を有しない。

2 Aが、売買代金の一部を支払う等売買契約の履行に着手した場合は、Bが履行に着手していないときでも、Aは、本件約定に基づき手付を放棄して売買契約を解除することができない。

3 Aが本件約定に基づき売買契約を解除した場合で、Aに債務不履行はなかったが、Bが手付の額を超える額の損害を受けたことを立証できるとき、Bは、その損害全部の賠償を請求することができる。

4 Bが本件約定に基づき売買契約を解除する場合は、Bは、Aに対して、単に口頭で手付の額の倍額を償還することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。

【解答及び解説】

【問 7】 正解 4

1 誤り。手付の性質は、当事者の意思により決まるのであり、その額が僅少であるからといって、解約手付とする約定が無効となるわけではない。
*民法557条

2 誤り。解約手付は、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄して、契約の解除をすることができる。したがって、Aは自らが履行に着手していても、相手方のBが履行に着手していなければ、手付を放棄して売買契約を解除することができる(判例)。
*民法557条1項

3 誤り。解約手付により売買契約を解除した場合、損害賠償の請求をすることはできない。
*民法557条2項

4 正しい。解約手付は、相手方が契約の履行に着手するまでは、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。したがって、売主が解約手付により売買契約を解除するには、現実に手付の額の倍額を現実に提供する必要があり、倍額を償還する意思表示をするだけでは足りない。


【解法のポイント】肢3は、しっかり覚えておいて下さい。もともと、解約手付というのは、手付の放棄や倍返しさえすれば、契約を解除できるようにしたものです。簡単に言えば、手付金の分の損さえすれば、契約から抜ける権利を確保したものです。したがって、損害額が手付の額を超えるからといって損害賠償が請求できたのでは、何のために解約手付を交付したか分かりません。