下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成11年 問9

【問 9】 Aの被用者Bが、Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為をし、CからAに対し損害賠償の請求がなされた場合のAの使用者責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Bの行為が、Bの職務行為そのものには属しない場合でも、その行為の外形から判断して、Bの職務の範囲内に属すると認められるとき、Aは、Cに対して使用者責任を負うことがある。

2 Bが職務権限なくその行為を行っていることをCが知らなかった場合でも、そのことにつきCに重大な過失があるとき、Aは、Cに対して使用者責任を負わない。

3 Aが、Bの行為につきCに使用者責任を負う場合は、CのBに対する損害賠償請求権が消滅時効にかかったときでも、そのことによってAのCに対する損害賠償の義務が消滅することはない。

4 AがBの行為につきCに対して使用者責任を負う場合で、AがCに損害賠償金を支払ったときでも、Bに故意又は重大な過失があったときでなければ、Aは、Bに対して求償権を行使することができない。

【解答及び解説】

【問 9】 正解 4

1 正しい。使用者は、被用者がその「事業の執行」について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。そして、この「事業の執行」とは、被用者の職務行為そのものではなくても、その行為の外形から判断して、被用者の職務行為に属すると認められるものを含み(判例)、使用者は被用者のそのような行為に対して使用者責任を負うことがある。
*民法715条1項

2 正しい。被用者が職務権限外の行為を行っていることについて、相手方が悪意又は重過失があるときは、使用者は使用者責任を負わない(判例)。
*民法715条1項

3 正しい。被用者の負う不法行為責任と、使用者責任は、特殊な連帯債務関係にあり、債務が満足する(例えば、弁済など)事由以外は絶対効は生じない(判例)。したがって、被用者に対する損害賠償請求権が消滅時効にかかったとしても、使用者の損害賠償義務は消滅しない。
*民法715条1項

4 誤り。使用者が使用者責任を負う場合でも、使用者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。この求償権の行使に、被用者に故意・重過失がなければならないというような制限はない。
*民法715条3項


【解法のテクニック】本問は、宅建試験の問題としては、判例の知識を問うている非常な難問です。不法行為は、この欄で何回か書いたと思いますが、被害者救済という観点を忘れないようにして下さい。本問でもこの観点を持っていれば、分からないなりに、肢4が正解かな?という推測は付くと思います。肢4の知識は、判例ではなく条文の知識ですので、必ず押さえておくようにして下さい。