下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成11年 問8

【問 8】 同時履行の抗弁権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 宅地の売買契約における買主が、代金支払い債務の弁済期の到来後も、その履行の提供をしない場合、売主は、当該宅地の引渡しと登記を拒むことができる。

2 宅地の売買契約が解除された場合で、当事者の一方がその原状回復義務の履行を提供しないとき、その相手方は、自らの原状回復義務の履行を拒むことができる。

3 建物の建築請負契約の請負人が、瑕疵修補義務に代わる損害賠償義務について、その履行の提供をしない場合、注文者は、当該請負契約に係る報酬の支払いを拒むことができる。

4 金銭の消費貸借契約の貸主が、借主の借金に係る抵当権設定登記について、その抹消登記手続の履行を提供しない場合、借主は、当該借金の弁済を拒むことができる。

【解答及び解説】

【問 8】 正解 4

1 正しい。売買契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる(同時履行の抗弁権)。したがって、買主が代金の提供をするまでは、売主は引渡しと登記を拒むことができる。
*民法533条

2 正しい。同時履行の抗弁権の規定は、契約が解除された場合の相互の原状回復義務についても準用されている。したがって、当事者の一方が原状回復義務の履行の提供をしないときは、相手方は自らの原状回復義務の履行を拒むことができる。
*民法546条

3 正しい。注文者は、瑕疵の修補に代えて、損害賠償の請求をすることができる。そして、この損害賠償義務の履行は、注文者の報酬支払いと同時履行の関係にある。

4 誤り。金銭消費貸借の借主の借金の弁済と、抵当権の登記の抹消とは同時履行の関係に立たず、借金の弁済が先履行になる。すでに貸金の弁済義務を負っている借主に同時履行の抗弁権を認めることは、公平とはいえない。
*民法533条


【解法のポイント】本問は、同時履行の抗弁権にポイントを絞った問題です。同時履行の抗弁権は、公平の見地から認められるもので、民法のいろいろな場面で準用されています。今後も出題が予想されるところですので、同時履行の抗弁権が認められる場合と、認められない場合をまとめておいて下さい。その際は、当事者の「公平」という観点で自分なりに考えれば、覚えやすいでしょう。