宅建 過去問解説 平成10年 問39
【じっくり解説】
まず、問題を解答する前の確認として、一つの取引に複数の宅地建物取引業者が関与する場合、自ら売主、媒介業者等の立場でそれぞれの宅地建物取引業者に重要事項の説明義務があります。
念のため、重要事項の説明義務を負うのは、宅地建物取引業者であり、宅地建物取引士ではありません。宅地建物取引業者は、宅地建物取引士を「使って」重要事項の説明をする義務があります。
さらに、重要事項の説明をする宅地建物取引士は、「専任」である必要はないという知識は、みなさんご存知でしょうが、この説明をする宅地建物取引士には特に制限はありません。したがって、宅地建物取引士証を持っている資格を有する宅地建物取引士であれば、他社の宅地建物取引士を使ってもかまいません。
ここからは、本問に即して考えてみましょう。本問の業者A及びBは、共同で媒介していますので、AにもBにも重要事項の説明をする義務があります。なお、この点は業者Aが自ら売主、業者Bが媒介業者の場合でも同じです。
したがって、Aも、Bも宅地建物取引士を使って重要事項の説明をする必要があります。
それでは、2回も重要事項の説明をする必要があるのかといえば、そうではありません。もともと重要事項の説明は、取引の対象となる物件を説明することですから、物件は一つである以上、Aが説明する内容も、Bが説明する内容も同じはずです。これが矛盾する内容だったら、どちらかの調査が間違っていることになります。
したがって、AもBも説明義務を負うけれども、何も2回も説明する必要はなく、Aの宅地建物取引士aか、Bの宅地建物取引士bか、あるいは共同で1回説明すればいいことになります。
ただ、その際のAもBも重要事項の説明義務を負っているわけですから、宅地建物取引士のaとbの両方が重要事項の説明書に記名することは省略できません。そして、その内容については、AもBも責任を負わないといけません。
たとえば、業者Aの宅地建物取引士aが一人で代表して重要事項の説明をしたとしても、その重要事項の説明書にはbも記名して、Bもbもその内容については責任を負う必要があります。
実務的には、このような場合(aが一人で説明する場合)、Bとbが連帯して責任を負うことを証する書面(重要事項説明連帯責任証明書)を、Aとaが交付する重要事項説明書に添付する方法によって行います。
以上まとめますと、以下のようになります。
説明者=a一人でも、b一人でも、aとbが共同してもよい
記名=必ずaとbの両方が必要
なお、本問では、AとBが重要事項説明書を協力して作成していることになっていますが、重要事項説明書の作成については、宅建業法に特に誰が行うかについて規定がないので、本問のように共同で作成しても、A(もしくはa)かB(もしくはb)の一方が作成してもかまいません。ただ、重要事項説明書の内容については、aとbの両方の記名が必要である以上、A、a、B、bの責任は免れることはできません。
以上を前提に本問を見てみましょう。
重要事項の説明は、a一人でも、b一人でも、aとbが共同してもよいわけですから、AとBは、a一人を代表として、重要事項について説明させることができるという文章は、「正しい」ことになります。
次に、重要事項の説明は、a一人でも、b一人でも、aとbが共同してもよいけれども、記名は、必ずaとbの両方が必要なわけですから、aが単独で記名した重要事項説明書を交付させれば足りるという肢2は「誤り」で、これが本問の正解です。
最後に、重要事項説明書の内容については、aとbの両方の記名が必要である以上、A、a、B、bの責任は免れることはできないので、Aが調査及び記入を担当した事項の内容に誤りがあったときでも、Aとともに、Bも指示処分を受けることがあるので、肢4は「正しい」ということになります。