下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成10年 問39

【問 39】 宅地建物取引業者であるA及びBが、共同で宅地の売買の媒介をするため、協力して一の重要事項説明書(宅地建物取引業法第35条の規定に基づく重要事項を記載した書面)を作成した場合に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、Aの宅地建物取引士をa、Bの宅地建物取引士をbとする。

1 AとBは、a一人を代表として、宅地の買主に対し重要事項説明書を交付して重要事項について説明させることができる。

2 AとBは、重要事項についてaとbに分担して説明させるときでも、aが単独で記名した重要事項説明書を交付させれば足りる。

3 a及びbは、重要事項説明書を交付して説明する際に宅地建物取引士証を提示するとき、胸に着用する方法で行うことができる。

4 重要事項説明書に記載された事項のうち、Aが調査及び記入を担当した事項の内容に誤りがあったとき、Aとともに、Bも指示処分を受けることがある。

【解答及び解説】

【問 39】 正解 2

1 正しい。宅地建物取引業者は、売買の媒介をするときには、重要事項の説明を義務づけられており、共同で媒介する場合には、それぞれの宅地建物取引業者が重要事項の説明をする義務がある。しかし、重要事項の説明をする宅地建物取引士については、特に制限はないわけであるから、別々の宅地建物取引士を使って説明する必要はなく、A及びBが重要事項説明書を作成し、それをa一人が代表して説明すればよい。
*宅地建物取引業法35条1項

2 誤り。重要事項の説明は、aとbが分担して行ってもよいが、重要事項説明書に記名する宅地建物取引士は、実際に説明をした宅地建物取引士でなければならないから、aが単独で記名した重要事項説明書の交付では足りない。
*宅地建物取引業法35条5項

3 正しい。宅地建物取引士証の提示の方法としては、宅地建物取引士証を胸に着用する等により、相手方又は関係者に明確に示されるようにすればよい(通達)。
*宅地建物取引業法35条4項

4 正しい。たとえAが調査及び記入した事項とはいえ、重要事項説明書に記名している以上、AもBも記載の内容の誤りについて、責任を負わなければならず、指示処分を受けることもある。
*宅地建物取引業法35条


【じっくり解説】

まず、問題を解答する前の確認として、一つの取引に複数の宅地建物取引業者が関与する場合、自ら売主、媒介業者等の立場でそれぞれの宅地建物取引業者に重要事項の説明義務があります。

念のため、重要事項の説明義務を負うのは、宅地建物取引業者であり、宅地建物取引士ではありません。宅地建物取引業者は、宅地建物取引士を「使って」重要事項の説明をする義務があります。

さらに、重要事項の説明をする宅地建物取引士は、「専任」である必要はないという知識は、みなさんご存知でしょうが、この説明をする宅地建物取引士には特に制限はありません。したがって、宅地建物取引士証を持っている資格を有する宅地建物取引士であれば、他社の宅地建物取引士を使ってもかまいません。

ここからは、本問に即して考えてみましょう。本問の業者A及びBは、共同で媒介していますので、AにもBにも重要事項の説明をする義務があります。なお、この点は業者Aが自ら売主、業者Bが媒介業者の場合でも同じです。
したがって、Aも、Bも宅地建物取引士を使って重要事項の説明をする必要があります。

それでは、2回も重要事項の説明をする必要があるのかといえば、そうではありません。もともと重要事項の説明は、取引の対象となる物件を説明することですから、物件は一つである以上、Aが説明する内容も、Bが説明する内容も同じはずです。これが矛盾する内容だったら、どちらかの調査が間違っていることになります。
したがって、AもBも説明義務を負うけれども、何も2回も説明する必要はなく、Aの宅地建物取引士aか、Bの宅地建物取引士bか、あるいは共同で1回説明すればいいことになります。

ただ、その際のAもBも重要事項の説明義務を負っているわけですから、宅地建物取引士のaとbの両方が重要事項の説明書に記名することは省略できません。そして、その内容については、AもBも責任を負わないといけません。
たとえば、業者Aの宅地建物取引士aが一人で代表して重要事項の説明をしたとしても、その重要事項の説明書にはbも記名して、Bもbもその内容については責任を負う必要があります。
実務的には、このような場合(aが一人で説明する場合)、Bとbが連帯して責任を負うことを証する書面(重要事項説明連帯責任証明書)を、Aとaが交付する重要事項説明書に添付する方法によって行います。

以上まとめますと、以下のようになります。

説明者=a一人でも、b一人でも、aとbが共同してもよい
記名=必ずaとbの両方が必要

なお、本問では、AとBが重要事項説明書を協力して作成していることになっていますが、重要事項説明書の作成については、宅建業法に特に誰が行うかについて規定がないので、本問のように共同で作成しても、A(もしくはa)かB(もしくはb)の一方が作成してもかまいません。ただ、重要事項説明書の内容については、aとbの両方の記名が必要である以上、A、a、B、bの責任は免れることはできません。

以上を前提に本問を見てみましょう。
重要事項の説明は、a一人でも、b一人でも、aとbが共同してもよいわけですから、AとBは、a一人を代表として、重要事項について説明させることができるという文章は、「正しい」ことになります。
次に、重要事項の説明は、a一人でも、b一人でも、aとbが共同してもよいけれども、記名は、必ずaとbの両方が必要なわけですから、aが単独で記名した重要事項説明書を交付させれば足りるという肢2は「誤り」で、これが本問の正解です。
最後に、重要事項説明書の内容については、aとbの両方の記名が必要である以上、A、a、B、bの責任は免れることはできないので、Aが調査及び記入を担当した事項の内容に誤りがあったときでも、Aとともに、Bも指示処分を受けることがあるので、肢4は「正しい」ということになります。

【解法のポイント】この問題は、いい問題というのか、難しい問題というのか、ややこしい問題ですよね。詳しくは、上記「じっくり解説」をご参照下さい。