宅建 過去問解説 平成10年 問15
【じっくり解説】
本問に関する条文は、不動産登記法の109条です。ちなみに、最近の不動産登記法の問題の傾向は、条文の言葉をそのまま問題文にしていることが多いので、ちゃんと読んで下さい。
第109条 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
2 登記官は、前項の規定による申請に基づいて登記をするときは、職権で、同項の第三者の権利に関する登記を抹消しなければならない。
たとえば、A→B売買予約でBが仮登記した後、A→C売買契約でCが本登記をしたという事例で考えましょう。先ほどの条文で「登記上の利害関係を有する第三者」というのは、上の例でいうと、Cのことです。したがって、Bが仮登記から本登記をするには、Cの承諾が必要だという意味です。
そして、Bの仮登記から本登記への申請があれば、登記官は、職権で、第三者(C)の権利に関する登記を抹消しなければならないとされています(第2項)。
このように所有権に関する仮登記に登記官の職権による抹消という手続を要求したのは、所有権というのは最も基本となる重要な権利だから、登記記録上、Bの登記と両立しないCの登記を残したまま、Bの登記をするというのは混乱する可能性があるからです。そこで、Cの承諾+登記官によるCの登記の抹消という手続を設けたわけです。
ただ、注意してほしいのは、Bの仮登記が「所有権」ではなく、抵当権のような「所有権以外の権利」の仮登記であった場合です。この場合は、利害関係を有する第三者の承諾は不要で、Cの登記抹消もしないということです。109条も「所有権に関する仮登記に基づく本登記」という表現になっています。
たとえば、A→B抵当権設定仮登記、その後A→C売買契約でCの所有権移転本登記という場合ですが、仮にBの抵当権設定仮登記が本登記になったとしても、Cの所有権が奪われるわけではありません。したがって、Cの登記を抹消することはできないはずです。この場合、Bの抵当権の仮登記には順位保全効があるわけですから、BはCの所有する不動産に抵当権を有しているということになります。
Bの仮登記が所有権である場合は、Bの所有権とCの所有権は両立しないので、Cの所有権の登記を外して抹消しないといけませんので、そのためCの承諾が必要です。ところが、Cの所有権とBの抵当権は両立しますので、Cの承諾がなくても、Bは抵当権をCに対抗できるとすればそれでいいわけです。以上より、本問は「誤り」ということになります。