下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成10年 問11

【問 11】 Aは、平成4年8月、その所有地について、Bに対し、建物の所有を目的とし存続期間30年の約定で賃借権(その他の特約はないものとする。)を設定した。この場合、借地借家法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

1 Bが、当初の存続期間満了前に、現存する建物を取り壊し、残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造した場合で、Aにその旨を事前に通知しなかったとき、Aは、無断築造を理由として、契約を解除することができる。

2 当初の存続期間満了時に建物が存在しており、Bが契約の更新を請求した場合で、Aがこれに対し遅滞なく異議を述べたが、その異議に正当の事由がないとき、契約は更新したものとみなされ、更新後の存続期間は30年となる。

3 Bが、契約の更新後に、現存する建物を取り壊し、残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造した場合で、Aの承諾もそれに代わる裁判所の許可もないとき、Aは、土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。

4 存続期間が満了し、契約の更新がない場合で、Bの建物が存続期間満了前にAの承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるとき、Bは、Aに対し当該建物を買い取るべきことを請求することはできない。

【解答及び解説】

【問 11】 正解 3

1 誤り。借地権者が、借地権の存続期間が満了する前に建物を取壊し、残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾があれば、借地権の存続期間が延長される。本肢ではBは、Aにその旨の通知をしておらず承諾も得られていないのであるから、存続期間の延長は認められない。しかし、当初の存続期間中の建物の再築自体は、借地人の自由であるから、Aは無断築造を理由に契約を解除することはできない。
*借地借家法7条1項

2 誤り。本肢では、借地契約は更新されるが、更新後の存続期間は20年である。
*借地借家法4条

3 正しい。契約の更新の後に建物の滅失があった場合において、借地権者が借地権設定者の承諾又はそれに代わる裁判所の許可もないのに、残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は、賃貸借の解約の申入れをすることができる。
*借地借家法8条2項

4 誤り。借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。これは、存続期間満了前に借地権設定者の承諾なく再築した建物についても同様である。
*借地借家法13条1項


【解法のポイント】肢1と肢3の建物の再築に関しては、条文そのままではなく、ひねって出題されることが多いので、もう一度しっかりとその内容を理解して下さい。まとめておきます。

★ まとめ ~ 借地権者の建物再築
[当初の存続期間中の建物の滅失・取壊し]
地主の承諾あり=存続期間の延長(承諾・築造の早い日から20年)
地主の承諾なし=再築自体は自由、ただし、存続期間の延長はなく、当初の期間に終了→正当事由を満たすかどうかで更新が決まる。正当事由なく終了する場合でも建物買取請求権あり。

[更新後の建物の滅失・取壊し]
借地権者=解約申入れできる
地主=無断築造に対し、解約の申入れできる