下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成10年 問10

【問 10】 相続人が、被相続人の妻Aと子Bのみである場合(被相続人の遺言はないものとする。)の相続の承認又は放棄に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 相続の承認又は放棄をすべき3ヵ月の期間の始期は、AとBとで異なることがある。

2 Aが単純承認をすると、Bは、限定承認をすることができない。

3 A及びBは限定承認をしたが、Bが相続財産を隠匿していたとき、相続債権者は相続財産をもって弁済を受けられなかった債権額の1/2について、Bに請求できる。

4 Aは、Bの詐欺によって相続の放棄をしたとき、Bに対して取消しの意思表示をして、遺産の分割を請求することができる。

【解答及び解説】

【問 10】 正解 4

1 正しい。相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。この相続の開始があったことを「知った時」というのは、人により異なることがあるので、相続の承認又は放棄をすべき期間の始期は、AとBとで異なることがある。
*民法915条1項

2 正しい。限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができるので、一人が単純承認していると、限定承認はできない。
*民法923条

3 正しい。Bの相続財産の隠匿は、法定単純承認となる(民法921条3号)。ところで、限定承認をした共同相続人の一人又は数人について法定単純承認事由があるときは、相続債権者は、相続財産をもって弁済を受けることができなかった債権額について、法定単純承認事由に該当する共同相続人に対し、その相続分に応じて権利を行使することができる。したがって、相続債権者は、Bに対してBの法定相続分(1/2)について、弁済を請求することができる。
*民法937条

4 誤り。相続の承認及び放棄は、原則として撤回することができないが、詐欺・強迫等による場合は取消しをすることができる。ただ、この取消しは、家庭裁判所に申述しなければならないのであって、相手方に対する意思表示により行うわけではない。
*民法919条4項


【解法のポイント】この問題は、肢3と肢4が難しかったので、正解率は低かったのではないかと推測されます。肢3は、あまり試験では出題されないような条文で難しいですよ。あまり気にしなくてもよいと思います。肢4は、出題当時の受験生は知らなかった人が多かった思いますが、再度の出題が予想されますので、この機会に覚えておいて下さい。