下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成10年 問1

【問 1】 Aの所有する土地をBが取得したが、Bはまだ所有権移転登記を受けていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、Bが当該土地の所有権を主張できない相手は、次の記述のうちどれか。

1 Aから当該土地を賃借し、その上に自己名義で保存登記をした建物を所有している者

2 Bが移転登記を受けていないことに乗じ、Bに高値で売りつけ不当な利益を得る目的でAをそそのかし、Aから当該土地を購入して移転登記を受けた者

3 当該土地の不法占拠者

4 Bが当該土地を取得した後で、移転登記を受ける前に、Aが死亡した場合におけるAの相続人

【解答及び解説】

【問 1】 正解 1

1 主張できない。借地借家法10条の規定による賃貸借の対抗要件(借地上の登記ある建物)を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。そして、この賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
*民法605条の2第1項・3項

2 主張できる。二重譲渡においては、先に登記を備えた者が優先するが、他人を害する目的で不動産を取得した者は、たとえ先に登記を備えたとしてもその所有権を第三者に主張することはできない(背信的悪意者)。
*民法177条

3 主張できる。二重譲渡において、登記を備えなければ対抗できない第三者とは、登記の不存在を主張する正当な利益を有する者とされている(判例)。不法占拠者は、正当な利益を有する者とはいえず、Bは登記なく所有権を主張できる。
*民法177条

4 主張できる。相続人は、被相続人の地位を包括的に承継するので(民法896条)、被相続人の売主たる地位も相続する。したがって、Bは登記なく所有権を主張できる。
*民法177条


【解法のポイント】本問は典型的な物権変動の対抗要件の問題です。肢1は、所有権を主張するということは、結局賃貸人の地位を主張することになるので、注意して下さい。