下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成9年 問12

【問 12】 家屋の賃貸人Aと貸借人Bの間の家賃に関する次の記述のうち、借地借家法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 家賃の増減について特約のない場合で、建物の価格の低下その他の経済事情の変動により家賃が不相当に高額となったとき、Bは、Aに対し将来に向かって家賃の減額を請求できる。

2 一定期間家賃を増額しない旨の特約がある場合でも、その期間内に、建物の価格の上昇その他の経済事情の変動により家賃が不相当に低額となったときは、Aは、Bに対し将来に向かって家賃の増額を請求することができる。

3 Aの家賃の増額請求について、増額を正当とする裁判が確定した場合で、Bが既に支払った額に不足があるとき、Bは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれをAに支払わなければならない。

4 Aの家賃の増額請求に対し、Bが相当と認める額の家賃を提供したが、Aがその受領を拒んでいる場合に、Bが相当と認める額の家賃を供託したとき、Aは、家賃不払いを理由に家屋の賃貸借契約を解除することはできない。

【解答及び解説】

【問 12】 正解 2

1 正しい。建物の借賃が、建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動等により不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。したがって、家賃の増減について特約がなくても、家賃の減額を請求することができる。
*借地借家法32条1項

2 誤り。肢1で述べたとおり、家賃の増減請求ができるが、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。したがって、本肢では家賃の増額請求をすることはできない。
*借地借家法32条1項

3 正しい。増額を正当とする裁判が確定した場合においては、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
*借地借家法32条2項

4 正しい。建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。そして、その借賃を家主が受領しない場合、借主は家賃を供託して債務を免れることができるので(民法494条)、Aは賃貸借契約を解除することはできない。
*借地借家法32条2項


【解法のポイント】肢2についてですが、家賃を「減額しない」旨の特約があっても、経済事情が変動すれば減額請求できますが、「増額しない」旨の特約はそのまま有効で、経済事情が変動しても増額請求はできません。その根拠はなかなか難しいところなんですが、みなさんはこの「覚え方」としては、増額しない旨の特約は借主に有利だから」と覚えおいていいと思います。