下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 平成9年 問7
【問 7】 不当利得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 A所有の不動産の登記がB所有名義となっているため固定資産税がBに課税され、Bが自己に納税義務がないことを知らずに税金を納付した場合、Bは、Aに対し不当利得としてその金額を請求することはできない。
2 建物の所有者Cが、公序良俗に反する目的でその建物をDに贈与し、その引渡し及び登記の移転が不法原因給付である場合、CがDに対しその返還を求めることはできないが、その建物の所有権自体は引き続きCに帰属する。
3 Eは、F所有のブルドーザーを賃借中のGから依頼されて、それを修理したが、Gが倒産したため修理代10万円の取立てができない場合、ブルドーザーの返還を受けたFに対し不当利得として10万円の請求をすることができる。
4 土地を購入したHが、その購入資金の出所を税務署から追求されることをおそれて、Iの所有名義に登記し土地を引き渡した場合は不法原因給付であるから、Hは、Iに対しその登記の抹消と土地の返還を求めることはできない。
【解答及び解説】
【問 7】 正解 3
1 誤り。固定資産税は、形式的に不動産の登記名義人が納税義務者になっているが、実質的には、本来の所有者が負担すべきものである。したがって、Bは本来の所有者であるAに対して不当利得としてその金額を請求することができる。
*民法703条
2 誤り。CからDへの建物の贈与は公序良俗に反する目的なので、不法原因給付ということになるが、このような不法原因給付をした者(C)は、その給付したものの返還を請求することができない。このようにCが返還請求できない反射的な効果として、その建物の所有権はDに移ったことになる(判例)。
*民法708条
3 正しい。本肢のEはGに対して修理代金の請求権を有しているが、Gが倒産したことにより取り立てることができない。一方、Fは修理されたブルドーザーの返還を受けており利益を得ている。そこで、EはFに対して修理代金の10万円の不当利得返還請求をすることができる。
*民法703条
4 誤り。HからIへの譲渡は、いわゆる虚偽表示になるが、それが肢2で述べた不法原因給付になれば、HはIに対して返還請求ができないことになる。しかし、肢2では公序良俗に反するという違法性が強い目的があったのに対し、本肢のように単なる虚偽表示というだけでは、不法原因給付にはあたらない(判例)。したがって、虚偽表示による意思表示は無効になるので、HはIに対して登記の抹消と土地の返還を求めることができる。
*民法703条
【解法のポイント】本問は、不当利得のみにポイントを絞った初めての問題です。しかも、内容的にも非常に難解で、その後の出題もないようです。どんな過去問でも、一度本試験で出題されると、再度出題される可能性というのはあるものなんですが、本問に関しては難しすぎると思いますので、極端にいうと無視してもらって結構です。ほとんどの範囲は勉強し尽くして(権利関係だけでなく、法令上の制限も宅建業法も税その他もですゾ!)、やることがなくなってきたという人は別ですが、とりあえずパスしていいと思います。どうしても、気になる方は、解説を見ておいて下さい。まあ、本試験にはこういう問題もあるということです。合否には影響しません。ただ、不当利得というのは、言葉自体は宅建試験でもたまに出てきますので、不当利得とはどういうものかくらいは、覚えておいて下さい。不当利得返還請求とは、「法律上の原因がないのに利益を得たものは、それを返還しなさい」という意味です。